児童養護施設の出身者に支援を

養護施設の子ども達

高い離職率に就労支援の必要性

ケアリーバーに支援の手を!

 身近に頼る大人がいないケアリーバーといわれる人たちの離職率が3年目で61%(高卒者平均:39%)と高く、就労支援が求められています。(参考報道:2023年5月8日 読売新聞オンライン)その背景には、せっかく自立して職に就くことができても、誰にも相談できずに職場で悩みを抱えたままのストレス状態の中で仕事を続け、心身に不調をきたしてしまい、休職し離職にするケースが多いことが指摘されています。

sad boy in gray sweater sitting on the floor

 ケアリーバーたちの多くは、乳幼児期などに両親の離婚等で、引き取り手や身寄りがないことで児童養護施設に入所して育てられた子ども達や、生活困窮の中で母子ともに生きる道を選択した結果、児童養護施設に預けられた子ども達など、小さい頃に親との離別の苦しさを味わっています。さらには、職員が少なく超過密状態の児童養護施設での生活は過酷です。親の愛情をうけて幸せに暮らすことができず、周囲の大人たちに甘えてはいけないという認識が必要な環境だったといえます。そのため、「自分のことは自分でやること」という考えで孤独な子ども時代を過ごし、いくつもの寂しくつらい過去のトラウマと心の傷を抱えて、過酷な子ども時代を乗り越えて来た若者たちといえます。

そして児童福祉法で定められた「原則18歳」で退所して就職して自立生活をおくることになります。多くの子たちは寮生活ができる職場に就職し、衣食住の確保と仕事を確保することになります。中には夜間の専門学校に通うことで、さらなる自分自身の目指す夢を追いかける子たちもいます。
 しかし、仕事における課題をこなしてゆくには、「自分のことは自分でやる」という考え自体がストレスをため込むリスクが高く、さらには周囲に頼ることに慣れていないことで、ついつい自分で過度に仕事を抱えこむ事になりがちです。その結果、仕事のストレスで身体の調子を崩してしまい休職するなどで職場から離脱し、さらには退職することになると衣食住の全てをあわせて失うことになります。キャリアアップの夢のために専門学校の学費も出せなくなり、将来の夢もあきらめることになります。

このような児童養護施設や里親家庭などで育ってきた経験を持つケアリーバーの若者たちの自立生活を継続できるように支援することが、いま私たちに求められています。該当するビジネスに精通したカウンセラーによる具体的な仕事の進め方アドバイスや相談対応自分の目指すキャリアづくりのためのキャリアカウンセリングの対応、仕事におけるストレスを回避できる仕事スキル獲得サポートや、周囲をうまく巻き込んだり相談できる人間関係の構築スキル獲得サポートなど、いつでも相談できる窓口が地域社会に求められています。

こども若者総合相談センターの支援

サポートをしましょう

 各種のNPO法人の活動や自治体による「ケアリーバーの自立支援、就労支援」の仕組みが整備されつつあります。内閣府では地方公共団体における相談窓口としての「子ども・若者総合相談センター」の設置を推進し、その設置状況を公開しています。(内閣府:相談センター推進協議会全国自治体での所在地一覧 ) 
 いろんな事情で生活基盤を失ったケアリーバーの方々は、決して自分の将来の夢を諦めることなく、ぜひとも自治体や地域の運営する「子ども・若者総合相談支援センター」などに相談してください。まだまだ地域社会のサポート体制の充実や窓口PRが求められますが、過酷な幼少期を乗り越えてきた多くのケアリーバーたちが、ようやく手にした「自立生活」の幸せをこれからも継続して維持できるよう、一人でも多くの方々が彼らを理解し、一人でも多くの方々が彼らに温かい支援の手を差し伸べてくださることを心から祈ります。

《ケアリーバーとは》
養護施設などで育った経験のある若者たちで、現在の児童福祉法では施設入所できるのは原則18歳未満迄で、最長でも22歳となっています。施設を退所してケアリーバーとして、就職しての自活生活を始める若者は毎年4千人といわれており、法改正で2024年からは年齢制限が撤廃されますが、多面的なサポートが今後も求められています。