「子どもの貧困解消法」が国会成立され、今後は実効性のある具体的な施策展開が課題です

SOSを出す子どもの貧困に直面している女の子

従来の法律が抜本的に改正され、現在の貧困解消と将来の貧困対策を目的とする長期的な支援を目指す「子どもの貧困解消法」とされました

令和6年6月19日に「子どもの貧困解消法」が国会成立し、今後は実効性のある具体的な施策展開が課題です。
2013年に国会成立した「子どもの貧困対策法」(正式名称:子どもの貧困対策の推進に関する法律)は、さらに実効性を高めて強化推進する法律改正のため、6月19日に抜本的な改正案として「子どもの貧困解消法」(正式名称:子どもの貧困の解消にむけた対策の推進に関する法律)として、国会成立しました。

国会議事堂の外観写真


改正案では、貧困解消むけた法律の目的が明確にされ、子どもが適切な養育・教育・医療を受けられない等の権利侵害や社会的孤立を防ぐ対策を強化することを目指す法律となっています。今後、自治体における実効性のある具体的な施策展開が課題となります。

子どもの貧困現状:6千人アンケート調査結果(子どもへの精神的サポートと経済支援が必要)

2023年に、公益財団法人「あすのば」が実施した、全国の生活保護受給世帯や住民非課税世帯の約6千人を対象として、子ども・若者が1862人の小学生から大学・専門大学生、その保護者4012人に実施したアンケート調査結果からは、深刻な子どもの貧困状況を如実に現しており、厳しい経済的な困窮から抜け出せず、精神的にも苦悩している現状が浮き彫りとなっています。そのことから、公的な経済的支援の強化を第一に推進し、子どもへの精神的サポートについてもきめ細かくサポートすることが重要であるといえます。

貧困状態で泣いている女の子

精神的な苦悩を生みだす貧困:18%の子どもが「消えてしまいたい」と回答

友だちと時間を過ごすことがでないことや、出費のかさむ学校行事の修学旅行や遠足に行けないなどの孤立を生み出し、精神的ストレスが大きくなります。その結果としてアンケート調査では、「消えてしまいたい」と考える子どもが18%も存在する。それは、「死んでしまいたい」に近い表現であり、子どもの貧困は、精神的な子どもの苦悩と孤立に結びつく深刻な事態であるといえます。

  • 「消えてしまいたいと思うことはあるか?」:18% よくある・時々ある(小学生から高校生)
  • 「孤独を感じることがあるか?」     :35% よくある・時々ある(小学生から高校生)
  • 「奨学金や学費免除を受けているか?」  :92% 受けている(大学・専門学校生)
  • 「アルバイトをしているか?」      :25% 受けている〈奨学金だけでは足りない〉(大学・専門学校生)
  • 「お金がなく諦めたことは?」熟や習いごと(48%)、友人と出かけること(47%)クリスマスや誕生日のお祝い(42%)、海水浴やキャンプ(32%)将来の夢(10%)

「お金がないことで諦めたこと」として、「将来の夢」を諦めたという子どもや若者が10%も存在していることは、将来を担う子どもの夢を貧困が奪い去っているという、あまりにも悲しい日本の現代社会が浮き彫りとなっています。このことから、経済的な支援とあわせて、子どもたちへの精神的な支援としての精神的苦悩を軽減するためのメンタルケアなどのサポートの充実が課題の一つであるといえます。

養育費の負担軽減を希望:90%の保護者

アンケート回答からは、貧困に苦しむ家庭の経済的困窮の現状が明らかになっています。任意回答で、食事状況について「子どもが『お腹がすいた』と言っても、食べられるものがない」という声や、学童保育に関しては、「学童保育の料金が高く、子どもを預けられず、子どもの夏休みなど長期休みの間は、仕事に出られず、収入が途絶え赤字が膨らむ」などの声から、その苦しい現状が見えてきます。また、行政相談の窓口の対応について、「嫌な思いをしたり、屈辱的に感じたことがある」という、59%の回答からは、胸をはって支援を受けられるように、公的支援サービスへのしくみ改善の課題や、「教育費への支援を希望する」という保護者が90%存在している。

  • 世帯年収の平均額 :178万円
  • 貯蓄額50万円以下:74%
  • 教育費や進学の費用負担の行政支援を希望する:90%
  • 家計がさらに苦しくなった(物価高騰などで):85%
  • 世帯収入が減った(コロナ禍の影響などで):53%
  • 「行政相談の窓口対応で嫌な思いや屈辱的に感じたことがあるか?」:59%(とてもそう思う・まあそう思う)
  • 「子ども食堂を利用したことがあるか?」:46%(利用したかったが、利用したことがない)

アンケート回答から、貧困で苦しむ家庭を支援強化のひとつとして、今後の「経済的支援」の強化充実「公的支援サービス向上」への仕組み改善が課題の一つだといえます。

参考引用情報:子どもの貧困調査(公益財団法人あすのば)

子どもの貧困対策に必要な家庭の経済支援

「子どもの貧困解消法」の概要

「こどもの貧困解消法」は、子どもの貧困を解消し、将来の貧困を防ぐことを基本とし、子どもの貧困に対する対策を推進するための法律で、子どもが心身ともに健やかに育成され、教育の機会が均等に保障され、夢や希望を持つことができるようにすることを目的としています。

楽しい家族でのピクニック場面

具体的な施策として、教育の支援、生活の安定に資するための支援、職業生活の安定と向上に資するための就労の支援、経済的支援などが盛り込まれています。この法律は、公布から3ヶ月以内に施行され、「子ども家庭庁」から全国の自治体にたいして具体的な通達が発信され、地方自治体が実施すべき施策や体制整備すべき事項が明確となります。

「子どもの貧困解消法」改正のポイント

霞が関の官庁ビル外観

【法律名】
「子どもの貧困対策推進法」から「こどもの貧困の解消に向けた対策推進法」に変更

【すべての法文】
「子どもの貧困対策」から「こどもの貧困の解消に向けた対策」に変更

【目的】
〇「子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう」から「貧困により、こどもが適切な養育・教育・医療を受けられないこと、多様な体験の機会を得られないこと、権利利益を害され、社会から孤立することのないよう」と変更し、目的を明確化(第1条)
〇「児童の権利条約の精神」に加え、「日本国憲法第二十五条(生存権)、こども基本法の精神にのっとり」が追記(第1条)

【基本理念】
〇「現在のこどもの貧困を解消しつつ将来のこどもの貧困を防ぐこと」が新設(第3条2)
〇「妊娠から出産まで、おとなになるまでの支援が切れ目なく行われるよう」が新設(第3条3)
〇「こどもの貧困が家族の責任に係る問題としてのみ捉えられるべきものではなく」、「国民の理解を深めることを通じて、社会的な取組として推進」が追記(第3条5)

【基本的施策】
〇貧困の指標に「ひとり親世帯の養育費受領率」が追記(第9条2二)
〇大綱作成には「こどもや家族、学識経験者、民間団体などの意見を反映」が復活(第9条3)
〇教育支援には「こどもに対する学校教育の充実」、「学校教育の体制の整備」が追記(第11条)
〇生活支援の対象は「子ども・保護者」から「こども・その家族」に変更。「住居の確保・保健医療サービス利用の支援」が追記(第12条)
〇保護者の就労支援には「雇用の安定」が追記(第13条)
○経済的支援には「こども・その家族の生活の実態を踏まえ」が追記(第14条)
○民間団体の活動支援として「財政上の措置その他必要な施策を講ずる」が新設(第15条)
〇調査研究の事項に「こどもの貧困の実態、貧困の指標、こども・家族の支援の在り方、こどもの貧困を防ぐための施策の在り方、地域の状況に応じた対策の在り方」が新設(第16条)

参考引用情報:

(1)【こどもの貧困解消法】抜本的な改正案が成立!(子どもの貧困対策センター 公益財団法人あすのば)

(2)こどもの貧困対策(こども家庭庁)

実効性のある具体的施策への課題

「こどもの貧困解消法」の改正に関連して、子ども家庭庁から地方自治体への通達で明らかにすべき内容、自治体が推進する上での具体的な施策作りや新たな推進体制に関する課題について、以下が重要だと考えられます。

(1)子ども・若者の意見が反映できる仕組みの必要性


こども家庭庁は、大臣書簡として、2023年11月17日に地方自治体にたいして、こども基本法の施行に関して、下記のような大臣書簡が出されています。

『令和5年4月に施行されたこども基本法に関して、こどもや若者が将来にわたって幸福な生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を目指し、こども・若者が意見を表明する機会や多様な社会的活動に参画する機会が確保されること、また、こども・若者の意見が尊重され、こども・若者のために何がもっともよいことかを優先して考慮されることを基本理念としています。そして、国や地方公共団体は、こども施策の策定・実施・評価に当たり、こども・若者や子育て当事者等の意見を反映させるための措置を講ずるものとされています。これは、都道府県議会や市区町村議会において、こども施策の策定等を行う場合も同様です。』

東京都庁のビル外眼

このことから、今回の法改正への施策展開として、地方公共団体における、意見反映プロセスについての相談応対やファシリテーター等の派遣を行うことで、地方公共団体における意見反映の取り組みを推進するとしています。

これにより、地方自治体は子どもの意見を政策に反映させるための具体的なガイドラインや事例を提供され、確実な展開が課題となります。

参考引用情報:こども家庭庁大臣書簡:2023年11月17日

(2)切れ目ない包括的な支援の必要性

2021年9月16日から2023年3月15日まで計8回開催された、内閣官房主催による有識者会議では、子どもの視点に立った政策立案、全ての子どもの健やかな成長、Well-beingの向上、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援など、地方自治体が取り組むべき課題について議論されています。
具体的な課題として、制度や組織による縦割りの壁、年度の壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援の必要性が指摘されています。

霞が関の官庁ビルのエントランス

参考引用情報:こども政策の推進に係る有識者会議(こども家庭庁)

(3)「こども政策」としての関連施策との連携強化の必要性

子どもの成育環境にかかわらず、誰一人取り残すことなく健やかな成長を保障するために、下記の子ども政策の施策項目とあわせた「子どもの貧困対策」の強化を有識者会議で指摘されており、現状の子どもの貧困を早期に解消するために、今後の継続的な強化策が必要といえます。

  • 児童虐待防止対策の更なる強化
  • 社会的養護を必要とするこどもに対する支援の充実
  • 社会的養護経験者や困難な状況に置かれた若者の自立支援(関連ニュース情報:養護施出身者に支援を
  • ヤングケアラー対策(関連ニュース情報:ヤングケアラー支援の法律施行
  • ひとり親家庭への支援
  • 障害児支援の充実
  • いじめ・不登校対策
  • 自殺対策
  • 非行少年の立ち直り支援
可愛い双子の姉妹の写真

(4)民間ボランティア団体との連携の必要性

子どもは貧困状態による自己効力感の喪失や孤立感で、精神的な苦痛や心のストレスが大きく伴うことになります。そのため、貧困対策に連動する、ヤングケアラー対策やひとり親家庭への支援、そして児童虐待防止やいじめ・不登校対策、自殺対策など、の各施策展開においては、精神的なストレス対策として、個別で継続的なメンタルケアや心理カウンセリング対応が必須となります。

民間ボランティア活動団体のメンバ―たち

そのようなメンタルケア対応は、地方公共団体のリソースでは困難なため、民間団体やボランティア団体の提供する有料サービスを利用することが必要となります。それらを利用した、貧困状態にある要支援児童・家族には、支援サービス利用時の公費補助の制度などが望まれます。

地域社会の子育て家族支援が必要です

これからの未来社会を担う子どもたちが、健康な身体を維持して、必要な教育を受けることでき、将来の社会の役に立つために、それぞれの子たちが目指す目標に向かって、幸せにいきいきと過ごせるように、地域が一丸となって、子どもたちを育てることが必要です。

泣く子を心配している優しい言葉をかける地域の人

そのためには、社会制度の整備や地方公共団体の方々による施策展開と同様に、地域社会の方々による子育て家族サポートがとても重要です。

地域で孤立して、経済的に困窮する子育て世代の親御さんや、将来の夢を断念するような困窮する子どもたちを、見かけた場合には、思いやりを持って、支援の手を差し伸べていただくことを、心からお願い致します。

子育てで悩むお母さん

誰もが、「利他の心」を持ち、他者への「思いやり」の気持ちで、子育て家族に接してくださるようにお願い致します。

育児と仕事を両立させるシングルマザー


それは、『地域で子育てに苦労している様子の家族があれば、声をかけてあげ、何かサポートできることは無いかと話しかけてあげ、何かに困っている様子の家族がいれば、何に困っているのか、話を聞いてあげ、解決のために必要なことは何かを一緒に考え、地域社会の一人として出来ることを思案し、自分にできることがあれば、静かにお手伝いし、自分にできないことであれば、それができる人の存在を探し、一緒に解決すること考える』そんな隣人になっていただけるよう、心からお願いします。

菜の花畑で遊ぶ家族連れの姿

執筆者

長谷川メンタルヘルスケアセンター

代表カウンセラー 長谷川裕通