「傷つくHSP本人が悪い」のではなく「傷つける側が悪い」という認識が必要です
HSP( Highly Sensitive Person:感受性の優れた人)への正しい理解と適切な環境がHSPの優れた才能を開花させます
これまでの、HSP( Highly Sensitive Person:感受性の優れた人)への間違った社会的偏見を改めることが必要です。「傷つくHSP本人が悪い」のではなく「傷つける側が悪い」という認識が必要です。さらには、HSPへの偏見として、「些細な誹謗中傷で傷つくのはHSPの本人が悪い!」、「物事を深く考える癖があるHSPの人は繊細すぎる!」などがありますが、それらはHSPだから傷つきやすいのではなく、周囲の関わり方が悪いから傷つくのです。それは、職場パワハラ、学校イジメ、児童虐待などは、誰でもがその悪影響を受けて深く傷つきます。
適切な環境では、、HSPの人がもつおう盛な探求心で深い思考を巡らせる調査研究を極めることや、感受性の豊さを芸術面や文学面で大いに発揮することができます。それは、悪い環境ではHSPの人への心理的な悪影響は深刻となり、逆に適切な環境下では優れた才能を存分に発揮することができます。そのことからHSPの人は良くも悪くも周囲の環境影響を大きく受けやすいことを意味します。
目次
【目次セクション】
2)HSPの指標となる「環境感受性」は全ての人が持つ気質の一つです
3)HSPの誤解(生活に困難なHSPが5人に1人いるという誤解)
4)社会的な偏見がHSPを苦しめる(考えすぎる・繊細すぎるHSP本人の気質に問題がある)
6)良くも悪くも環境影響を強く受けるHSPの特性(適切な環境では優れたHSPの才能を発揮する)
7)HSPの人が傷つきやすい原因は本人ではなく、非常識な周囲の関わりが原因
8)HSPの人は、思いやり・優しさ・共感性があり、非常識な攻撃ターゲットになりやすい
9)HSPへの正しい理解と安全な環境がHSPの才能を開花する
HSPの心理学的な定義とは
心理学的なHSP( Highly Sensitive Person:感受性の優れた人)の一般的定義は「環境感受性がとても高い人」のことです。心理学上の確立された概念ではなく、精神医学上の概念でもありません。それは、エレイン・アーロン氏が1996年に表した一般書で提唱した心理学的な考察概念です。
HSPの人が持つ環境感受性が高いことをポジティブに表現すると、「周囲の人の感情や環境変化の情報を繊細にかつ敏感に深く感じ取ることができる優れた感性がある人」と解釈することができます。
その定義における「環境感受性」が高いとは、その人が周囲の環境からの影響を受けやすいことを意味しており、「ポジティブ面においてもネガティブ面においても、周囲の人や環境の影響を受けやすい」という単なる気質・性格的な特徴です。しかし、HSPは精神疾患による感覚過敏や医学的な疾病ではなく、診断名称でもありません。
HSPは人の気質的・性格的な特徴を心理学的に表現している定義です。その環境感受性は誰でもが持ち合わせている気質特性であり、周囲の状況を敏感に感じ取ることができる能力が高い傾向にあるということを表現しているにすぎません。
参考引用文献:「HSPの心理学」(科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」) 著者:飯村周平 出版:金子書房
参考研究論文:「感覚処理感度:生物学的応答性の進化に照らしてのレビュー」 Sage Journals第16 巻 3 号(2012 年 8 月 2012年8月):執筆:エレイン・N・アロン、アーサー・アロン、ヤジア・ヤギェロヴィチ
HSPの指標となる「環境感受性」は全ての人が持つ気質の一つです
世の中には、周囲に温かな気配りができる感受性の高い人もいれば、周囲のことを全く気にかけない極端に感受性が低い無神経な人もいます。さらには当然のことですが平均的な感受性の人もいて、他の気質特性と同様に「怒りっぽい気質」、「外交的気質」、「共感性気質」などと同様に、その国・地域・社会・文化を背景にした分布状況の差異はあるものの、日本人における気質特性の分布も同様に分布しています。
その分布状況は、「なだらかなグラデーションの正規分布」の様相で広く一般社会に分布している状況にあるといえます。さらには、環境感受性としての気質特性の平均値を中心とした正規分布のグラフ上に、その平均値の両側に分布割合の少ない高帯域と低帯域が分布しています。それは、ある特定の閾値レベル以上の群をHSP帯域であると表現するものではありません。
HSPの誤解(生活に困難なHSPが5人に1人いるという誤解)
「環境感受性」のレベルは、周囲の人からうける心理的影響や、環境そのものから受ける心理的影響の強弱レベルの単なる指数的表現といえます。しかしHSPに対する大きな誤解として、5人に1人がHSPだとうものがあります。それは、エレイン・アーロン氏が伝えた、環境感受性の強い傾向にある人の割合として「世の中には、何らかの環境特性にたいして、5人に1人は強い感受性を示す敏感な傾向にある人がいる」というもので、あくまでも傾向分布です。
そのことは、生活上において、感受性が強いことから生じる生活上の困難さを抱えている人々が存在している割合ではありません。具体的には、感受性レベルがある特定数値の閾値レベル以上の「生活が困難になるほどに感受性の非常に高い人=HSPが、5人に1人が該当する」という意味ではないことを認識することが必要です。
世の中の人が持つ、気質特性や性格特性の統計上の分布状況は正規分布のグラフ様相にあります。それは感受性の低い人や高い人が一定数が分布しているのは当然の解釈です。そのことから、HSPは気質的な特性を表す「環境感受性」が極めて低い群、やや低い傾向にある群、平均的な群、やや高い群、非常に高い群という分布を示しており、平均値を超えるレベルの人がなだらか曲線による正規分布のグラフ様相を呈しているといえます。
それは、「外交的か内向的か」や「温厚か短気か」などと同様に、環境影響を受けやすい「感受性の高い群」と環境影響を受けにくい「感受性の低い群」に二分して考えることが誤解を排した適切な解釈となります。
社会的な偏見がHSPを苦しめる(考えすぎる・繊細すぎるHSP本人の気質に問題がある)
HSPの人は感受性が強く、周囲の違和感や変化にたいして敏感に情報把握できる特性をもっており、ネガティブな関わりを示す非常識な人の言動にたいして、「傷つきやすい」、「気にしすぎる」、「考えすぎる」などの傾向があります。そのことから、職場では「きつい物言いの顧客や上司だとすぐに体調不良になる繊細さんだ!」とか「些細なことで傷つくから扱いにくい!」などと偏見を持たれることが多くあります。
これまで、長谷川メンタルヘルスケアセンターでサポートしたHSPの傾向にある方々には、事件被害相談などで公的機関の相談窓口などにおいても誤解や偏見を持たれて苦労したという体験を持っている人が多くいます。
例えばSNS誹謗中傷の被害相談では「少しくらいの誹謗中傷で傷つくのは、本人が繊細すぎることに問題があるのではないか」とか、ストーカー被害や学校いじめ被害の相談では「恐怖を感じるのは、気のせいではないのか」とか、「不安を感じるのは、考え過ぎではないのか」などの偏見を持った対応をされたという事例が多くあります。
これらの事例から、相談窓口の担当者が感受性が低く共感性のない人の場合には、HSPの人が持つ敏感な危機警戒のアラート感覚を理解できないことや、偏見をもった窓口対応をされてしまったことで、実際に不幸な事件に巻き込まれ、大きな心理的被害をうけてしまい、長期的なトラウマケアを余儀なくされたというケースもあります。
同様に、HSPの人が関わる家族や職場などによる偏見や誤解がネガティブなメッセージが、HSPの本人を苦しめます。それは、「HSPの人は対人関係の困難性を抱えており、生まれながらの気質特性であり、解決できない問題だ」という大きな誤解があります。
さらには、「HSPの傾向にある人は傷つきやすく、問題を抱えている人が多くて、扱いづらい人が多い」などの偏見もあります。そのような誤解と偏見をもとに、HSPの人にたいして「あまり気にしないようにしなさい」などとメッセージを伝えられることで、理解されない苦しさと、「気にしすぎる自分が悪い」という自己否定の認識に結びつき、より苦しい状況に追いやる周囲のネガティブな関わりが、さらに状況悪化をまねくことに結びつきます。
劣悪環境から受けてしまうHSPへの心理的影響
周りに無配慮で非常識な人が多い職場や集団などの劣悪な環境で、HSPの人が生活することを余儀なくされると、より大きな悪影響を受けてしまいます。
例えば罵声が飛び交うパワハラ的な職場や、意地悪で非常識な人による陰湿イジメが横行する集団などのように、人格障害傾向の強い非常識な人が多く存在するような劣悪な生活環境では、毎日のように過大なストレスを受けることになります。
それは、日常的な精神的虐待といえる非常識なイヤミ言葉、SNSなどでの心ない誹謗中傷の攻撃などで、深く傷つくことが多くなりストレスが蓄積されるなど健康にも悪影響を及ぼします。さらには非常識な関わりでストレスをかけた側から「少しぐらいの誹謗中傷で傷つくのは、繊細すぎるHSPのあなたに原因がある。気にするほうが悪い!」という理解のないメッセージが、さらにHSPの本人が傷つけることになります。
その結果、「繊細な感性、高い感受性を持つ自分が悪いのだ」という間違った認識が刷り込まれ、自分自身が持つ素晴らしい感性の豊さという才能をすべて否定してしまう、完全な自己否定に陥ります。
そのため、自分の持つ本来の素晴らしい感受性の豊かさをネガティブにとらえてしまい、ストレスで体調を崩したり、人と関わることに前向きになれないなどの状況に至る恐れもあります。
良くも悪くも環境影響を強く受けるHSPの特性(適切な環境では優れたHSPの才能を発揮する)
劣悪環境で生活すると、精神的なストレスを強くを受けてしまうことは、全ての人に言えることです。それは、心ない非常識なパワハラ的な言動を繰り返す人や攻撃的な反社会的な人など、相手への気遣いが全くできない人が身近にいるような心理的安全性の低い職場や学校などの過酷な環境では、HSP傾向にある人だけではなく、誰でもが、その劣悪な環境からの大きなストレス影響を受けることになります。
しかし、HSPの人は、理不尽で非常識な関わりをする人が身の周りに存在しないような、心理的安全性が高く安心できる適切な環境で生活することができれば、自分が持つポジティブな優れた感性を強く認識することができて、自己肯定感を高めて、自分の優れた才能を芸術・音楽・文学などをはじめとした多くの分野で、優れた感性の高さを発揮することができます。
HSPの方々が、対人関係や生活環境から強いストレスを感じたり息苦しさを感じてしまうことの多くは、心無い周囲の人たちのネガティブな関わりが原因となることが多くあります。逆に、ポジティブな環境で生活できる場合には、HSPの人たちが持つ自からの才能をフルに発揮し活躍することが可能となります。
参考関連情報:「心理的安全性」が職場のストレスを開放し、優れたパフォーマンスを発揮する(長谷川メンタルヘルスケアセンター:ヘルスケ・最新ニュース)
HSPの人が傷つきやすい原因は本人ではなく、非常識な周囲の関わりが原因
HSPの人が傷つくのは、繊細だから傷つくのではなく、周囲の非常識な人による理不尽な関わりに問題があるから傷つくのです。それは、パワハラが蔓延する職場環境や虐めが横行する学校環境、児童虐待の傾向がある家庭環境などでは、誰でもがその悪影響を受けて大きく傷つくことになり、HSPの人も同様に傷つきその影響がさらに深刻化することを意味します。
それは本人の気質特性が問題ではなく、心ない周囲からの関わりに問題があることを意味します。このようなHSPへの偏見がある社会であっても、幸いも周囲の人にも恵まれ適切な環境で育ち、子どもの頃から自分の感受性の高さという優れた才能を認識できて、自分の感性の高さが生み出すことができる創作活動などで、存分に才能を発揮している人も多く存在しています。
それは、理不尽な環境で生活すると誰もが傷つき大きなストレス被害をうけますが、HSPの人の場合には、その被害影響がさらに大きくなることを意味します。
一般的な偏見や誤解として、「HSPの人は繊細すぎることで傷つくことが多い」というものがありますが、それは間違った認識であり、心ない無神経な周囲の人々による劣悪環境が原因なのだということを再認識することが必要です。
HSPの人は、思いやり・優しさ・共感性があり、非常識な攻撃ターゲットになりやすい
これまで、長谷川メンタルヘルスケアセンターでサポートした方々の多くにも、劣悪な環境で、非常識な周囲の人の言動で傷ついたという多くのHSPの方々に共通する人格特性として、心優しい人たちで、他者への気遣いや温かい思いやりがあり、優れた感性と才能を持った、人間性の高い方々が多いという傾向があります。
それは、まさに、HSPの人に通じる素晴らしさとしての、感受性が高く、心優しさの特徴をもつ方々は他者を攻撃することはありません。また、周囲から非常識な関わりを持たれても、自分が悪いからそのような関わりを持たれるのだという認識を持つことが多く理不尽な関わりにも耐えることが多くなります。
HSPの人は人間性が高い多くの側面をもっているため、非常識な人達による理不尽な攻撃を受けても反撃するようなことはなく、その苦しみに耐えることが多くなります。そのことから、理不尽な関わりをする非常識な人達にとっては、HSPの人は反撃してこない格好のストレス発散の攻撃ターゲットになり易いという状況をがあります。
参考情報:心理カウンセリング領域と対処ヒント
HSPへの正しい理解と安全な環境がHSPの才能を開花する
HSPの人が持つ間違った認識として「傷つき易いのは自分に原因がある」、「自分が悪いから攻撃される」等という自分を責める自己否定の考えを持つことが多くなります。その考えを認知修正することが必要です。
さらには、HSPの人がそのような自己否定の認識に追いやった、周囲からの誤ったメッセージを排除することが必要です。それは、未来社会に向けて、個人の尊厳を尊重し多様性を認める思いやり社会を実現するためには、喫緊の課題であり、急務となっています。
そのために、重要なことは「HSPの本人が悪いから傷つくのではなく、非常識な関わりを持つ人が多い悪い環境だから傷ついてしまうのだ」という悪い環境が原因だという認知修正が周囲にとっても、本人にとっても必要です。むしろ「良い環境では、HSPの優れた感受性を多方面に開花することができる」というポジティブな事実を認識することが必要です。
それによって、HSP傾向にある優れた感受性を発揮できる創造的、感覚的な機微な才能を発揮するイラスト、デザイン、絵画など芸術的な分野、詩集や俳句、小説など文学的分野、作曲・作詞、映像など音楽映像分野などがたくさんあります。
さらには人への共感性と博愛的な優しさを発揮できる人道的な国内外での福祉分野、繊細で微妙なバランス感覚が必要な企業コンサル系分野など、多くの才能を発揮できる分野がたくさんあり、それぞれの人のワクワクする方向で才能を発揮している国内・海外の著名人が多く存在しています。
ポジティブな環境ではHSPの素晴らしい特徴が開花しその人の才能を存分に発揮することが可能となります。それには、HSPの人への誤解と偏見を排した理解と、HSPのポジティブ面にフォーカスをあてた周囲の温かな関わりが作りあげる適切で安心できる生活環境が、それを実現させる要素だといえます。
非常識行為への警戒アラートをHSPの人が発信する社会改革
最近は、SNSで何げない言葉で他人を誹謗中傷することや、乱暴な言葉によるパワハラ、性別差別、ハラスメント、心理的虐待の関わりなど、これまで見過ごされてきた非常識な人の言動に対する社会的チェック機能がフル稼働する方向に変化しています。
人にたいする思いやりのなさ、人の個性と尊厳を否定する関わり、多様性を無視するような行為が横行する企業・組織・集団では、これからの社会では淘汰される時代となっています。今後は、そのような集団の中で、非常識で社会通念から外れた、言動で人を平気で傷つける共感性のない人達にたいして、人を思いやる方向に人格を形成することを要求する社会が到来しています。
常にイヤミ事で人を平気で傷つけるような非常識な関わりを持つ人が職場などの環境に存在すると、誰でも強いストレスを感じます。HSPの人にたいしても、非常識な関わりでプレッシャーとなるストレスをかけておきながら、「敏感すぎる本人が悪い」というメッセージが伝えられることで、はさらに大きなストレスを受けることになります。
その様相は、これまでは、隠されていた非常識な人の言動や行為にたいする社会的な警戒アラートを環境感受性の高いHSPの人が中心となって、社会に向けて警告していると解釈することもできます。
非常識な問題ある人がその行動を是正し、思いやりある心に変化し、人の尊厳を尊重する社会で受け入れられる人格形成を促す役割がHSPの傾向にある方々が、担ってくれているように思えてなりません。
誰もが安心できる環境がHSPの優れた感性を発揮させる
従来、HSPの傾向にある方々が持ち合わせている感受性の強さに関して、誤解と偏見をもって、ネガティブな側面だとして強調されることが多くありました。しかし、今後は、HSPの人が持つポジティブ面の素晴らしさに焦点をあてた、適切な社会的認識が世の中に拡がることで、HSPの人が持つ素晴らしい才能が開花されることになります。
HSPの方々のポジティブな側面として、自分を取り巻く環境変化に敏感であること、周囲の人たちの言動に敏感であること、それらは、周囲から受け取る情報を深く掘り下げて考察する深い洞察力、推理力、思索力をもちあわせているといえます。
さらには、周囲にたいして、とても繊細で気配りができることから、周囲にいる困っている人への温かな支援ができる共感性の高い人、周囲につねに温かな気遣いと気配りができる人、などHSPの傾向にある人は人間性が高く、多くの崇高な人格特性を持っています。
HSPの人が持つ素晴らしい人間性は、これからの未来社会を切り拓き、新たな世界を築く世代の人々に社会が求める、必要不可欠な人間性だといえます。
それは、未来社会が求める人格形成としての「あるべき姿」であり、HSPの人がもつ高い人間性をとおして、私たちに課せられた人格形成の必要性を明確にしてくれているのではないかと、思えてなりません。
執筆者紹介
代表カウンセラー:国家資格 公認心理師 長谷川 裕通
参考情報:長谷川 裕通による執筆書籍一覧