労災申請で「パワハラ」等による精神障害が急増中

チームワークの取れたメンバーの職場

労災申請が年々急増しており、その大半が職場のパワハラやカスハラなどによる心身不調の就労困難です

厚労省によると、全労災請求(申請)件数の8割が「精神障害による労災申請」で、その原因の半数以上が職場のパワハラなどによる心の不調による就労困難です。この状況から、多くの就労者が精神衛生上の厳しい労働環境で就労している実態があるといえます。

メンタル不調で就労困難な女性

厚労省は、職場のメンタルヘルス向上のたの社会課題として、2024年10月に、従来の50名以上の事業場における従業者のストレスチェック義務化に加え、50名未満の小規模零細企業にもストレスチェック実施の義務化を拡大する方針を打ち出しており、「職場環境の改善」と「従業者メンタルケアの急務」の二つが職場ストレス対策の重要課題です。

仕事で疲れた女性

労災申請の8割が精神障害で前年より3割増と急増中!

令和6年6月に厚生労働省が公表した令和5年度「過労死当の労災補償状況」における全労災請求件数は、令和5年度では4,598件(前年比132%)と急増しておりで、そのうち78%が「精神障害による労災請求」と大半が心の不良による就労困難です。さらには、精神障害の労災請求件数は3,575件で令和4年度よりも829件増加(前年比133%増)となっており、職場ストレスによる就労困難者が急増していいます。

労災申請が急増中のグラフの前で苦悩する女性社員

厚労省による「労災補償状況」と「過労死防止対策白書」

厚労省では、労災請求の状況から、職場ストレスの状況についての年度推移を把握できるデータとして、労災請求の状況や職場での心身不調に至った原因などの詳細データとして「過労死当の労災補償状況」を公開しています。また、働く人々の職場ストレス状況と、過労死防止をふくめたメンタルヘルスにたいする政府の年度毎の取組み状況を毎年公開しており、令和6年度版「過労死等防止対策白書」として280ページにおよぶ詳細報告書を、2024年6月に議決定し国会報告に年次報告し、一般公表されています。

健康的な職場で働くワーカー達

参考引用情報
(1)令和5年度「過労死当の労災補償状況」令和6年6月 厚労省公開

(2)令和6年度版「過労死等防止対策白書」令和6年6月 政府閣議決定

職場の「パワハラ」、「セクハラ」、「カスハラ」、「暴力・いじめ・嫌がらせ」が労災決定の主原因

令和5年度における、精神障害による労災請求件数(3,575件)のうち、労災決定件数(2,583件)の原因分析である「出来事」の分類で、精神障害の原因は、職場の上司、同僚などからの「パワハラ行為」、「セクハラ行為」、「暴行・いじめ・嫌がらせ」、顧客や取引先からの理不尽な「カスハラ被害」などの、人間関係による対人トラブルが1,417件(構成比55%)と半数以上を占めており、前年よりも309件(前年比134%増)と急増しており、職場における人間性を無視した働く人々の尊厳を脅かす、非常識な行為が横行していることが推察されます。

大声で叫ぶパワハラの男性上司

精神障害で労災決定した1,417件の人間関係が原因の内訳令和5年度

  • 上司とのトラブル:599件
  • 上司などからのパワハラ被害:289件
  • セクハラ被害:156件
  • 同僚・部下とのトラブル:168件
  • 職場での暴行・いじめ・嫌がらせ:118件
  • 顧客からのカスハラ被害:83件
  • その他:4件
職場で虐め被害にあっている女性ワーカー

参考引用情
令和5年度「過労死等の労災補償状況」の訂正版について 令和6年7月 厚労省発表

労災補償の決定件数は、劣悪な職場環境が顕在化した「氷山の一角」です

労災請求件数および労災補償の決定数は、職場ストレスから心身不調に至るほどの、劣悪な職場環境が顕在化した「氷山の一角」といえる現象です。

職場ストレスで苦しむ女性

職場ストレスを抱える就労者の多くは、労災請求をするに至ることなく、心身不調は自分の精神的な弱さや業務スキルに問題があることが原因だったとして、自らが休職する期間を経て自主退職するケースが多く存在しています。さらには、労災請求をしても非常識な職場実態を証明することができないことで、労災認定を受けることができなかったケースも多くあります。

職場ストレスを抱えながら仕事に追われる女性ワーカー

そのことから、劣悪な職場環境で、大きな職場ストレスを抱えたまた、日々苦悩しながら、心身を削って職務に頑張る方々が多く存在していることを推察させられます。

いじめ行為の環境連鎖(職場→家庭→学校)を防ぐことが現代社会の課題です

職場でのパワハラや虐め被害による職場ストレスを抱えた就労者が、家族との生活の場である家庭にストレスを持ち帰り、家族へのDV行為や児童虐待的な関わり傾向が強くなります。

子どもを叱りつけるお母さん

職場ストレスは、家族や子ども達にストレスを発散する危険性が高まります。

母親から虐待をうけた男の子

そして、養育者からの児童虐待でストレスを抱えてしまった、養育者から虐待された子ども達は、通う学校内で他の生徒への嫌がらせや陰湿な虐め行為でストレスを発散する傾向が強くなります。それは、「職場」→「家庭」→「学校」へとネガティブなエネルギーであるストレスが連鎖し、大人の世界から子ども達の世界に、いじめ・虐待が連鎖して生じる「虐待の環境循環」が生じることになります。その発生の根源が職場における「パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラ」などのハラスメントに起因しているといえます。

学校で友だちを虐める子たち

特に、最近の学校における傾向は、虐め防止の啓発活動によって、周囲の目につきやすい身体的な暴力的虐めは少なくなった反面、嫌み言葉による「嫌がらせ・仲間外し」など心理的虐待が多い傾向があります。その結果、周囲からは仲のよい友だち同士の悪ふざけと見えるような、教師など周囲からは把握しにくい、より陰湿で巧妙な学校イジメとなることで、より深刻な状況に結びつきます。

「職場環境の改善」と「従業者メンタルケアの急務」の二つが重要課題

2024年10月に厚労省が打ち出した「中小零細事業場へのストレスチェック義務化方針」で、今後は、50名未満の小規模零細企業にもストレスチェック実施の義務化されることになります。

従業者へのストレスチェック

長谷川メンタルヘルスケアセンターでは、従業者のヘルスケアには、「職場環境の改善」と「従業者メンタルケアの急務」の二つが職場ストレス対策の重要課題と捉えています。

健康的な職場の笑顔の女性ワーカー達

そのことから、長谷川メンタルヘルスケアセンターでは、職場環境の改善と働く方々のメンタルヘルスを維持向上させる取組み強化をしております。

笑顔でいっぱいのワーカーたち

具体的には、中小零細事業場へのサービス提供として、「職場従業員へのストレスチェック」の毎年一回のスポット実施、Skype、LINE、Zoomなどのオンラインによる、従業者への「ビデオ心理カウンセリング」や「メールによる心理カウンセリング」、職場ストレスを軽減させるための「顧客からのカスハラ対応マニュアル」、「対人関係の構築スキルトレーニング」などの出前セミナー開催などで、ITシステム会社などのスタートアップ企業サポートに取り組んでいます。

執筆者
長谷川メンタルヘルスケアセンター
代表 国家資格 公認心理師
長谷川 裕通󠄁

参考情報
長谷川メンタルヘルスケアセンターの紹介

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