■過去体験から抜け出せない(トラウマ克服サポート)

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過去の恐怖体験は、消しゴムで消すことはできません。ケアをすることなく、それを忘れることで記憶を消し去り封印したつもりでも、それは無意識レベルで生き続け、あなたに悪影響を与え続けます。それは、まさにあなたの足元に散らばる「トゲのあるイバラ」のようです。忘れたつもりでも、ついつい足元のトゲを踏んでしまいます。そして傷つきます。メンタルケアは、足元に散乱している多くのイバラを拾い上げ、整理して、思い出したくない体験記憶として「良くない出来事のアルバム」に整理し、こころの図書館に片付けることです。それは、開架本棚ではなく、書庫の片隅の引出しでいいのです。それも、鍵のかかる引出しです。この整理ができることで、その出来事から影響を受けることはなくなります。

■心理アセスメントによる現状分析

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心理カウンセリングの方向性としては、第一ステップとして、現在の心理状況をアセスメントします。精神的な慢性的なストレス状態が生活場面でどのように影響しているのかを確認します。成人の方々であればお仕事にどのように影響しているのか、自分自身をネガティブにとらえていないのか、対人関係において自分自身をポジティブに表現するコミュニケーションができているのか、 などを深層心理領域も含めて確認します。また思春期の青少年であれば、自分自身への自己効力感を感じることができているのか、自分は何者なのか何を目指すべきなのか等の思春期作業に遅れがないのか、友達との関わりについて正常なコミュニケーションが取れているのか、引きこもり状態となっていないかなど、反抗期を迎えた子どもを抱えるお母さんであれば、子どもへの適切な関わりができているのかなど、をアセスメントします。

■ポジティブイメージのインストール

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第二ステップとして、過去の虐待体験や事件事故の体験トラウマが現在の心理状態にどのように影響しているのかについて、過去のご自身の虐待体験や事件事故の被害体験についての接近は慎重を要します。性急にトラウマに急接近することでPTSD的な症状を呈するようなパンドラのフタを開けてしまうことを避けつつ、徐々に確認しつつ、過去のトラウマを克服できるようなトラウマケアを進めることになります。その方法としては、ポジティブなイメージをインストールしつつ、脱感作的な手法を用いつつ、そのトラウマ的な出来事を整理しつつ、その不幸な体験の意味を過剰反応することなく第三者の視点でニュートラルに評価できる状態となれるように、トラウマケアを進めます。

■心を安定させる体験記憶の整理

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そして、その体験自体が他者の体験であるかのように、心が乱れることなく平静な精神状態で、人に話せる状態となることで、そのトラウマ体験を克服できたゴールとなります。その段階が、3つのトラウマ体験記憶の整理ができたといえます。その3つの記憶整理は、一つ目がリアルな苦悩体験の映像を伴う認識記憶、二つ目がその時に生じた苦痛感情をともなう感情記憶、三つ目がどの時の身体が感じた身体感覚を伴う身体記憶です。これらのケアがトラウマケアのターゲットとなります。
このトラウマケアは慎重に実施する必要があり、熟練した専門技法を習得した心理カウンセラーによるケア実施が必須です。親切心でクライアントの周囲の素人カウンセラーによるトラウマケアと称した無謀な関わりや、心理相談の経験が長い心理カウンセラーであっても、トラウマ治療経験のないカウンセラーによる、単なる文献を参考にした聞きかじりの知識だけで、見よう見まねのトラウマケアは禁物です。無謀なトラウマケアでは症状を悪化させてしまい、重篤なPTSD症状を呈することがありパニック症状的な状況に陥ると外出が困難、通勤通学の電車やバスなどの交通機関を利用できない状態や、自宅の玄関から出れない状態、日常的な引きこもり状態となる恐れもあります。

■高度な専門的トラウマケアの重要性

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トラウマケアの経験が浅いカウンセラーによる軽々な関わりは、重篤な病状に悪化させてしまい社会生活が困難な状態を引き起こすことに結びつく恐れがあります。それはクライアントを不幸に陥れることになります。たとえ専門資格を持つ臨床心理カウンセラーであっても、経験の浅いカウンセラーの対応できる領域ではないことを重ねてお伝えします。
過去の恐怖体験となる悪夢の出来事をなんとか乗り越えてきたサバイバーの方々にありがちな共通の傾向として、日々の生活のために体調の困難さを感じながらも、無理をしながら日常生活を送っている状況があります。これまでは心が乱れつつもトラウマとなっている心の傷にフタをして、心の奥底に閉じ込めてきたことで、なんとか心の安定を保ってきた方々が多く存在します。そのような方々に、軽々なトラウマケアは、逆に心に深く刻まれた記憶が噴出してしまい、重篤な心理障害を誘発する恐れがあります。特に、解離性人格性障害(多重人格)の症状である人格が解離することで苦痛や恐怖の困難場面を乗り越えてきた方々にとっては、解離した人格が顕著な活動を見せることで、主人格が認識できない行動 (遁走的な無意識行動)を引き起こしたり、解離する人格が次々と増えることで、統合失調症的な症状を呈することの恐れもあります。
このトラウマケアは、数週間で終えられるケアではなく、時間をかけて慎重に進めることが必要です。特に毎回のセッション時におけるクライアントの心理的反応を注視しながら慎重にケアを進めると同時に、毎回のセッション後の次回セッション迄の日常生活での変化状況について、リアルタイムで報告を受けられる体制とし、その変化の経過を常に心理アセスメントしながら、慎重に進めることが求められるケアとなります。そのため、対応する心理カウンセラーの側には相当の覚悟で臨むことが要求されます。