やめられない行為について

a kid washing the toothbrush under the faucet

強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、何度も同じ確認などを繰り返すなど、日常生活にも影響が出てきます。頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思い過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないなどがあります。この強迫性障害は不安障害の一種で、「手が細菌で汚染された」という強い不安にかきたてられて何時間も手を洗い続けたり、肌荒れするほどアルコール消毒をくりかえしたりなど、明らかに「やりすぎ」な行為をともないます。世界保健機関(World Health Organization:WHO)の報告では、生活上の機能障害をひきおこす10大疾患のひとつにあげられています。

参考情報(国立精神・神経医療研究センター こころの情報センター):強迫性障害|こころの病気を知る|メンタルヘルス 

■認知行動療法による直接的な克服サポート

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心理カウンセリングでは、認知行動修療法が基本的な方法となります。その中でも、再発予防効果が高い「曝露反応妨害法」が代表的な治療法で、 クライアント自身が強迫観念による不安に立ち向かい、やらずにはいられなかった強迫行為をしないで我慢するという行動療法です。しかし、大きなストレスや不安感との戦いとなりますので、最新の注意を払いながらクライアントの状況を見守ることが重要なポイントとなります。

■精神分析的な深層心理の究明

woman tied with measuring tape standing on scales

しかし、恒久的な克服にはその行為や不安の精神的な力動を突き止める心理的なアセスメントで深層心理を常に精査することが必要です。やめられないその儀式的行為に、なぜ至ってしまうのかの心理的な背景と原因究明によって、背景になっている不安や恐怖の根源自体が解消されていないことで、一つのとらわれている行為が克服できても、他の儀式的行為に移ってしまい、単に儀式となる対象の行為が変化しただけという結果に結びつく事が往々にして生じます。
そのために、儀式的な行為を低減させる克服サポートのプロセスの途中においても、その行為の発生頻度が低減してきたときに、他の行動に変異していないかなど、心の深層心理面での変化とあわせて、心の力動の変化状態を観察することが重要です。たとえば、汚いと思うものをさわって手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢する、などのチャレンジを繰り返すことによって克服を目指している場合には、特にその行為自体の変化と同様の行為が他の場面で起きていないことを注意深く観察することになります。このように、注意深くそして焦ることなく、自分を責めることなく、自分自身を信じて、対象行為にたいする克服課題を続けていくことで、強い不安が徐々に弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても済むようになることを目指します。