悩みで眠れない時は睡眠薬に頼らず悩み解決の心理カウンセリングが必要です

スカイツリーと桜の風景

向精神薬の多剤服用・長期服用による副作用リスクを避ける心理カウンセリングによる安全なプライマリケアがお薦めです

 心身の健康を維持するメンタルヘルスの観点で、悩みで眠れない時は睡眠薬に頼らず悩み解決の心理カウンセリングが必要です。

ストレスのある悩みを抱えて眠れない人たちの光景


 日々の健康を維持するプライマリケア―のポイントとして、日常的なストレスケアのために、悩みがある時は放置せず、早い段階で心理カウンセリングを気軽に利用することが必要です。そのためには専門性の高い心理カウンセリングがいつでも、気軽に受けられる医療制度への変革が必要です。

すがすがしい気分の女性

実践的な対処スキル獲得で問題解決を図る心理カウンセリングはプライマリケアに必須です

 仕事で悩んだり、職場でのパワハラや嫌がらせなど対人関係で困ったり、子どもや家族のことで問題が生じたときに、その問題が解決されずに長期化することで、ストレス状態が継続されてしまい、心身に悪影響がでます。

ストレスで疲れた状態で働く女性


 その結果、睡眠障害、心身症やうつ病などの精神疾患の初期症状がでることがあります。そのため多くの方々は掛かりつけ医や心療内科で睡眠薬などの向精神薬を処方してもらい、身体症状を軽減するための対症療法をうけています。

処方されたお薬の錠剤


 しかし、その悩みの種となっている根本原因が解決しない限り、悩みはいつまでも継続します。例えば、職場で困った問題や家族の問題など、その「困りごと」を解決するには、解決策を検討することが必要です。その解決策として、職場の対人関係における新たなコニュニケーション方法を模索したり、仕事の進め方を再検討したりするなどの対策を講じることがないと、悩みの種は解消しません。その解決方法を検討するためのお手伝いをすることが心理カウンセリングであり精神療法です。

心理カウンセリングの場面


 それは、自己理解を深め、自分の考え方を変化させたり、対人スキルを獲得したりして、相手に交渉する等の問題解決への気づきを得ることができます。それらは、向精神薬を服用するたけでは解決できない根本的な問題を解決することに焦点をあてます。身体症状は一時的に睡眠薬で改善されるかもしれませんが、完全に根本問題が解決しない限り、夜の不眠傾向から抜け出すことはありません。その結果、睡眠薬の長期服用で副作用によって、仕事の効率が落ちたり、昼間にボンヤリすることが増え、思考がまとまらないなどの、新たな生活上の支障が生じる恐れがあります。

向精神薬の副作用で苦しむ女性


 そのために、心がつらい状態に陥るような大きなストレスをうけてしまったと感じた時には、なるべく早い段階に、向精神薬を服用することなく、悩みの根本解決を図ることができる心理カウンセリングを利用することが必要です。

副作用のある投薬中心で体調維持してきたクライアントが急増しています

 最近の、長谷川メンタルヘルスケアセンターでのご相談にいらっしゃるクライアントさんの方々に多いケースとして、心理カウンセリングを利用するのが初めてで、「これまで数年間、心療内科に通院して、お薬を長く服用しているけれど良くならない」という方々が急激に増えているように感じています。そのような方々への初回インテーク面接でこれまでの状況を伺うと、生活上の根本問題となっている「困り事」の解決にフォーカスをあてる、本格的な心理カウンセリング利用の機会を得らえていない、状況が多くみられます。それは、ご自身の状況を整理し、その問題の解決策を検討することなく、これまで向精神薬を長期服用されてきたという、共通した状況があります。

安心安全な心理カウンセリングで悩みの根本解決を図る女性クライアント


 その事を知ると、ご本人の状況が気の毒でなりません。なぜ数年間にもわたり投薬治療中心で通院することなってしまったのか、なぜもっと早くに根本原因の対策を導き出す心理カウンセリングに強く導いてもらことが出来なかったのか、とても残念でなりません。これ迄このような回り道を余儀なくされ、ご苦労されているクライアントの方々が、なぜ増えているのか、それは、日本における医療制度の現状と問題点が浮き彫りになっているような気がします。

第一処方としての心理的な精神療法はプライマリケアの世界的標準です

 精神医療の欧米先進国では、向精神薬の副作用リスク懸念から、軽度の睡眠障害や心の落ち込みで抑うつ的な精神疾患の状態にある初期的症状には、安心安全な精神療法である心理カウンセリングが第一処方とされており、初期症状では向精神薬の投与はなるべく避けるように制限されています。同様に児童への向精神薬の投与は、脳神経の発達期における心身への副作用リスクが大きいため、世界的に児童にたいしての向精神薬の処方においては特に慎重を期す必要があるとする研究報告が多くあります。

日本では投薬中心の精神医療となる医療従事者


 そのため、海外では全世代にたいする、精神疾患の初期症状への第一処方は心理カウンセリングなどの精神療法であり、投薬治療は慎重を期してなるべく避けるべきとされています。その結果、欧米諸国では各種精神疾患の初期症状には、薬剤を処方しない精神療法といえる各種の心理カウンセリング手法にかんする研究開発が進んでいます。


 しかし、日本における精神医療の現状は、投薬治療が中心となっており、さらには複数の向精神薬を投与する多剤投与が長期にわたり処方されることが一般的です。その状況にたいして副作用リスクや依存性リスク、そして高齢者の認知症発症リスクが指摘されています。とくに、発売前の臨床試験では多剤投与時の副作用といえる薬剤の相互作用による副作用や、数年間にわたる長期間の服用での副作用を詳しく検証されていないケースもあり、未知の潜在的な副作用リスクが懸念されています。

副作用のある向精神薬による一時的な悩みを軽減する投薬療法のお薬


 日本の精神医療現場においては、投薬治療が中心であり、睡眠薬に抗うつ薬、抗不安剤など、複数の向精神薬が一度に処方され、さらに長期に投与されるケースが圧倒的に多いという現状があります。それは、根本的なストレス原因となっている対人関係の問題や、職場ストレスの問題などにたいする対処スキルを獲得するなどの、問題解決をはかることなく、身体症状に焦点をあてた投薬による対症療法的な治療が優先して行われているという指摘があります。

参考情報:

(1)  NASP Evidence Note: social prescribing and mental health. :National Academy for Social Prescribing, registered charity in England
(2) 児童青年期精神科における薬物療法の実際(抗うつ薬編):国立国際医療研究センター
(3) 子どもへの向精神薬処方の経年変化に関する研究について:一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構

精神疾患の初期症状には心理カウンセリングが安全です

 日常的な対人関係の悩みや、職場でのストレスなどによって、睡眠に問題が生じている方々や、精神疾患の初期症状に直面している方々に、第一処方として心理カウンセリングを強くお勧めします。向精神薬は一般的に症状の緩和に効果がありますが、副作用のリスクを伴います。心理カウンセリングは、副作用の心配なく、悩みの根本原因を解決するためのスキルを身につける手段として非常に有効です。

心理カウンセリングで悩み解決する場面

 
 心療内科に通院しているけれどあまり良くならないので、心理カウンセリングを受けてみたいというクライアントの方々が増えています。あらためて、不眠や心の落ち込みなど、精神疾患の初期症状には副作用リスクのある向精神薬による投薬治療ではなく、安心安全な心理カウンセリングが適切で優先すべきであることを強くお伝えします。

仕事上の悩みを解決するアドバイスをうける男性クライアントと女性カウンセラー


 心理カウンセリングによって、悩みの根本原因を解決するためのスキル獲得や認知修正が望ましいことを示すエビデンスが、国内外の研究報告に多くあります。
今回あたらめて、下記のような心理カウンセリングの利点をご案内します。

  1. 安心と信頼: 心理カウンセリングは、患者さんとカウンセラーとの信頼関係を築る場です。安心感を持ちながら、自分の気持ちや悩みを共有できる環境を提供します。
  2. スキル獲得: カウンセリングを受けることで、ストレス管理やコミュニケーションスキル、認知修正の方法など、悩みの解決に役立つスキルを獲得できます。
  3. 根本原因の解明: 向精神薬は症状の一時的な緩和に寄与しますが、根本的な原因を解決することはできません。心理カウンセリングは、患者さんの状態や症状に合わせて、深層にある問題を明らかにし、解決に導くことができます。
  4. 再発予防: 心理カウンセリングは再発予防にも効果的です。症状の再発を防ぐために、自己理解や適切な対処法を学ぶことでき、対人関係構築スキルなどが獲得できますす。
気持ちよく眠る猫ちゃん


 しかし、精神疾患の症状が深刻な場合には、心理カウンセリングとあわせて、向精神薬の服用と併用することが必要です。
精神疾患の初期状態の場合には、第一処方としては精神療法の心理カウンセリングを選択していただくことで大きなメリットが得られます。

参考情報
長谷川メンタルヘルスケアセンター:メンタルケアの紹介

参考書籍紹介
長谷川 裕通 著書紹介(読んで楽になるカウンセリング本シリーズ)

精神処方薬の減薬効果がある心理カウンセリング(認知行動療法、オープンダイアローグ療法など)

 海外では主流となっている薬剤を用いることのない、心理カウンセリングは安心安全なヘルスケア療法であり、ストレス原因の根本問題への対策を目指します。

心理カウンセリングで悩みの根本解決を図る場面


 その精神療法としての代表的な手法には、対話中心でクライアント自身が気づきを獲得する「認知行動療法」やクライアントの悩みに共感しながらのストレスケアと問題解決への気づきを促進する「クライアント中心療法」などがあります。

安全安心な心理カウンセリングで悩みの根本問題を解決する対策を検討する場面


 最近、注目されている療法として、クライアント本人やその家族と、関係する医療スタッフ全員で対話しながらクライアントに最適なケアを導き出すという「オープンダイアローグ療法」が注目されています。その療法は、医師、看護師、心理師、セラピスト、ケースワーカなどの治療関係者が集まり、そこに本人や家族も参加して、精神療法の方向性を一緒に検討し、本人も含めた治療方針への合意形成を図り、その中でクライアント自身にとって有効な新たな気づきが得られるものです。それは治療の進捗状況にあわせて、その方針性を検証する精神療法といわれ、大きな成果が報告されています。しかし、クライアントに関係する医療従事者がすべて参加することによる人件費と時間コストが非常に大きい欠点があり小規模の医療施設では実施は難しいといえます。

クライアントとその医療関係者によるオープンダイアローグ療法のカウンセリング場面


 これらの心理カウンセリングを主軸にして精神疾患のケアや進めることで、処方するお薬の減薬が無理なく実現できることや、入院療養の期間が大幅に短縮できたという、海外の症例報告や調査報告が多くあります。

医療従事者たちが活躍する場面


オープンダイアローグ療法は、フィンランド発祥の新たな精神療法アプローチであり、以下の特徴を持っています:

  1. 対話を重視:
    • オープンダイアローグは、参加者全員が対等な立場で対話を行うことを重視しています。
    • セラピストや専門家が主導するのではなく、参加者自身が自分の問題や経験について話し合い、解決策を見つけることを目指します。
  2. 統合失調症治療への応用:
    • 主に発症初期の統合失調症患者への治療的介入の手法として開発・実践されてきました。
    • 実践のためのシステムやケアの思想も含まれます。
  3. 対話の輪:
    • オープンダイアローグでは、患者、家族、専門家チーム(医師、看護師、心理士など)が輪になって「開かれた対話」を行います。
    • 専門家同士が感じたことを話し合い、それを当事者たちに聞いてもらうリフレクティングを挟むことで、自然に回復が起こります。
  4. 効果と成果:
    • オープンダイアローグを導入した西ラップランド地方では、統合失調症患者の入院治療期間が平均19日間に短縮され、抗精神薬の必要とされた事例は全体の35%になりました。
    • 2年後の再発率は24%(伝統的治療71%)であり、障害者手帳を受給している患者は23%(伝統的治療57%)と目覚ましい成果を上げています

参考資料

(1) 対話によるオープンダイアローグ精神療法:オープンダイアローグ・ネットワークジャパン(ホームページ)
(2)  変わり始めた精神医療:オープンダイアローグ療法の可能性: (NHK福祉情報ネットワーク)

精神医療における日本と海外との現状比較

 精神医療先進国の米国や英国など、海外の医療機関における精神疾患の初期症状にたいする治療方針は、安全な心理カウンセリング等の精神療法を第一処方としている現状があります。さらには向精神薬を投与する場合は、単一の向精神薬をまずは処方して様子をみる単剤処方です。

睡眠不足の女性


 しかし、現状の日本国内における精神疾患の処方には複数の向精神薬を多剤投与するケースが多くあります。その背景には、精神療法は診療時間が長いこと、および長い診療となる割には診療報酬の点数が低いことの2点の要因があります。それにより、日本の心療クリニックでは長い診察時間を要する精神療法を再診で継続して処方することは経営上において非効率とされており、投薬中心となります。


その状況についての日本と海外との現状をまとめると下記のようになります。

  1. 向精神薬の単剤処方 vs. 多剤投与:
    • 欧米先進国(米国と英国)では、海外メンタルクリニックの治療方針は通常、向精神薬の単剤処方を基本としています。初期症状には、投薬治療ではなく、心理カウンセリングなど精神療法を第一処方としています。
    • 日本では、精神疾患の処方にはしばしば複数の向精神薬を多剤投与し、それらを長期的服用することが一般的です。その背景には、安全処方といえる心理カウンセリングの精神療法は、心療報酬が低いことと、長い診察時間を要するため、メンタルクリニックで処方されることは少ないとされています。
  2. エビデンスと背景:
    • 米国と英国では、心理カウンセリングや精神療法の有効性についてのエビデンスが豊富にあります。これらのアプローチは、副作用のリスクが低く、患者さんの自己理解や問題解決スキルを向上させるのに役立ちます。
    • 日本でも、心理カウンセリングや精神療法の有効性についてのエビデンスがありますが、まだ十分ではありません。また、根本的な問題として医療機関における精神療法に関する医療報酬の低い点数や長い診察時間を要するなどの問題があります。また独立した心理カウンセリングルームによる精神療法は医療保険の適用外で自由診療となることの問題があります。それらの問題を克服し、安全で効果的な精神療法を一般的なものとすることが必要です。
  3. 改善の方向性:
    • 日本においても、向精神薬の多剤投与に頼るだけでなく、心理カウンセリングなどの精神療法を積極的に導入することが求められており、患者さんとのコミュニケーションを重視し、患者さんの立場に立った適切な治療法を選択することが重要です。
    • 安全で効果的な精神療法を一般的なものとするため、投薬処方によらない精神療法の比重を高める診療報酬の改定や、独立した心理カウンセラーによる精神療法を医療保険の適用対象とするなど、医療制度自体の見直しが求められます。
person holding first aid kit


(1) Evaluating the safety of mental health-related prescribing in UK
(2) Comparison of Depression Trends in the Japanese and US

向精神薬の副作用リスクと潜在的な危険性について

 投薬による安全性を確保するために、精神疾患の初期症状にたいする安全な診療方針として、世界的な診療方針として下記があります。

①初期症状には向精神薬を処方しないこと
②投薬による副作用リスクがある多剤投与を避けること
③依存性が生じることで減薬が難しくなる長期投与を避けること

これらは、投薬の安全性を確保するための世界的な診療方針であり世界基準といえるものです。

副作用リスクのある向精神薬の多剤服用



 現状において、日本の精神医療現場で一般的に処方されている多剤服用と長期服用の危険性は、下記があります。

①臨床実験では発現しなかった副作用が将来的に明らかになる単剤の隠れた副作用リスク
②多剤服用を想定していない臨床実験では検証されていない多剤投与時の複合的な副作用リスク
③世代をまたぐ将来的な出産児への神経遺伝的な疾患への潜在的副作用リスク
④高齢者における認知症発症リスク

処方された薬を服用する光景



 これらをはじめとする、多剤服用と長期服用の危険性があります。現状では、副作用が全く存在しない薬剤は存在しないといえることから、多くのメンタル不調にある方々は、多剤服用を長期的に継続することで、臨床実験では明らかにされていない隠れている、潜在的副作用による心身影響リスクを抱えることになるといえます。 

副作用リスクのある薬を服用すること危険性を示す写真


 向精神薬は、中枢神経系に作用し、精神活動に影響を与える薬物の総称です。抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬、ADHDの治療薬、中枢興奮薬、鎮痛薬などが含まれます。
一般的には精神疾患の治療に用いられる薬物を指します。

なお、向精神薬の副作用は、一般的に、眠気やめまい、食欲増進、性機能障害などが一般的です。処方された薬剤によって、副作用は大きく異なりますので、服用しているお薬には、どんな副作用があるのかを十分に理解し、医師の指示に従い、副作用に注意しながら服用することが必要です。

疲れた人


 また、医師に相談することなくに、自己判断で急激に減薬することや、服薬を中断することは、危険な離脱症状を誘発しますので、自傷他害などの生命にたいする危険性を伴うため、非常に危険です。減薬や服用中断を自己判断すること絶対に禁物です。


以下に、向精神薬の主な分類と代表的な薬の概要を示します。

  1. 睡眠薬:
    • 眠るための薬で、ベンゾジアゼピン系の薬が多く、作用期間が短期、中期、長期、超長期とあります。
    • 鎮静効果のある抗不安薬が使われることもあります。
    • ゾピクロン(アモバン、ゾピクロン): 睡眠障害改善剤。
    • 副作用は薬により異なります。
  2. 抗不安薬(緩和精神安定剤)
    • 不安症状の緩和に使用される薬物で、作用期間が短期、中期、長期、超長期とあります。
    • アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン): 抗不安薬。
    • 副作用は薬により異なります。
  3. 抗うつ薬(うつ病治療薬):
    • 主に大うつ病に使用され、「うつ状態」を呈する病態、気分変調症、抑うつ気分を伴う適用障害や身体疾患によるうつ状態などにも使われます
    • セレナール(オキサゾラム): 抗不安薬。
    • ジアゼパム(ホリゾン、ジアパックス): 精神安定剤。
    • 副作用は薬により異なります。
  4. 抗精神病薬(メジャートランキライザー)
    • 幻覚や妄想などの精神病症状に作用する薬物で強力精神安定剤といわれています。
    • 統合失調症や双極性障害に使用されます。
    • 薬剤により副作用が大きく異なるため、それぞれの副作用を認識しておくことが重要です。
    • 定型抗精神病薬:
      • フェノチアジン系精神神経安定剤(例: クロルプロマジン塩酸塩)。
      • 副作用には眠気、鎮静があります。
    • 非定型抗精神病薬:
      • ブチロフェノン系精神神経用剤(例: スルピリド)。
      • 副作用には体重増加、性機能低下などがあります。
  5. その他の向精神薬:
    • メチルフェニデート(リタリン、コンサータ): 中枢神経刺激剤。
    • モダフィニル(モディオダール): 精神神経用剤。
Midwife, Franca, at a hospital


参考引用情報

(1) 厚生労働省e-ヘルスネット(休養・こころの健康)
(2) 【薬理学】向精神薬の種類と特徴 〜抗精神病薬と抗うつ薬
(3) 「向精神薬中毒」になると現れる症状・副作用はご存知ですか
(4) 向精神薬の副作用: 公認心理師試験用語集

厚労省による向精神薬の多剤投与制限・長期投与制限の取組み(厚労省への報告義務)

 精神医療が進んでいる欧米における医療機関では、向精神薬の多剤投与と長期投与が確実に制限されています。日本においては、厚生労働省は心療報酬の減額という形で2012年から抑制に取り組んでおり、また2018年の診療報酬改定では多剤投与の制限に加え、長期投与への抑制策も導入されています。しかし、現状では、いまだに多剤投与が長期間にわたり処方されているケースが多いことを指摘する調査研究の報告があります。

厚生労働省の施策を立法する場の国会議事堂


 具体的には、厚生労働省は、医療報酬において、必要と認めらない多剤投与のケースには診療報酬請求額が減額される制度を導入しています。しかし、その多剤投与が治療上において適切であることを報告することで、減額されないことになっています。そのため、実質的には多剤投与が可能となってる現状があります。その結果、多くの医療機関では多剤投与と長期投与が継続されており、潜在的な未知な副作用も含め、心身への悪影響が懸念されています。

大規模な病院建物の夜景


 具体的な報告要領には、「抗うつ薬又は抗精神病薬に限り、精神科の診療に係る経験を十分に有する医師」として届け出たものが、患者の病状等によりやむを得ず投与を行う必要があると認めた場合、処方料等は減算されません。そのために、厚生労働者に提出すべき、その適切性を示すための報告書は、保険医療機関が1回の処方で「向精神薬多剤投与」(抗不安薬を3種類以上、睡眠薬を3種類以上、抗うつ薬を3種類以上、抗精神病薬を3種類以上、または抗不安薬と睡眠薬を合わせて4種類以上投与)を行った場合に必要とされる報告書です。

病院の入院病棟のベット


 具体的には、向精神薬多剤投与を行った保険医療機関は、毎年度4月、7月、10月、1月に、前月から起算して3ヶ月間の向精神薬多剤投与の状況について別紙様式40を用いて地方厚生局に報告する必要があります。この報告書は、抗うつ薬や抗精神病薬などの届出書と、精神科の診療に十分な経験を持つ医師の届出書添付書類を添付するもので、処方料等は減算されません。

多剤投与と長期投与に関する適切診療の報告書を提出先の官庁機関


 報告書の提出先は、保険医療機関が所在する都県を管轄する事務所です。厚生労働省はこの報告書について、向精神薬多剤投与の実態を把握し、適切な医療の提供に役立てるために重要であると厚労省は伝えています。

参考情報
(1)  向精神薬多剤投与に関する届出及び状況報告について(厚生労働省・関東信越厚生局)
(2)大規模診療報酬データを用いた向精神薬の処方実態に関する研究 (三島和夫氏:秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授)

海外のように心理カウンセリングを気軽に受けられる医療制度が必要です

 日本の精神医療が投薬中心となっている背景には、いくつかの要因があります。その一つに、心理カウンセリングの実施には、人手による人的パワーを要することにあります。それは、短くとも1時間以上、十分な時間として2時間近くのカウンセリング時間を要することで、数分間の診察では困難だという点があります。また、診療報酬の制度上において心理カウンセリングは報酬点数が作業コストに見合わない低さにあり、医療機関の経営上において、精神科医が自らの手で時間コストの大きい精神療法のメンタルケアを選択することが難しい医療環境にあります。

 日本の心療クリニックにおける診療時間は、診療報酬の時間設定から考慮すると患者あたり平均的に5分~10程度であり、その診察内で非効率な時間かける精神療法は経営的には実施が困難となっています。
(*補足:通院精神療法の診療報酬点数は、30分以上の診察で400点、5分以上の診察で330点となっており、初診は30分以上の診察時間をかけて行われることが多いですが、再診になると基本的には5分~10分というのが目安になってしまいます。)

精神科医による診察場面


 その結果、医療経営上において必要な経営戦略として、効率的で診療報酬の多い形で、多くの患者にたいして、多くの向精神薬を処方することが第一処方となる現実があります。また、正規の国家資格の公認心理師による独立した心理カウンセリングルームでのカウンセリングには医療保険の適用外となっているため、経営を維持するには人件費と拠点経費をまかなう必要性から、比較的短い45分間~60分程度で約10,000万円~15,000円程度の設定が一般的で、一般的の方々が気軽に利用するには高額といえます。
 

ストレスの根本問題を解決するための心理家カウンセリング場面


 日本では気軽に心理カウンセリングを受けられる環境が提供されている恵まれたケースとしては、大企業や官公庁・自治体の従業者の場合があります。民間大手企業の従業者むけのメンタルヘルス制度として組織契約したカウンセリングルームにおいて、正規社員への福利厚生の制度として無料で利用できるケースがあります。また官庁組織や地方自治体職員向けのメンタルヘルス制度として、公共入札で契約したカウンセリングルームを、正規職員が無料で利用できるケースがあります。それらの組織であってもアルバイトの非正規社員や業務委託契約の個人事業主は対象外ですが、正規従業者や正職員には恵まれた福利厚生の環境が提供されているといえます。


 しかし、日本国内の大半の労働者の方々は身近に心理カウンセリングを受けることは困難な現状にあります。それは、日本の労働人口の大半をしめる中小企業の多くの従業者の方々、パートアルバイトの非正規社員の方々、個人事業主の方々、家庭の悩みを抱えた家族などは、利用者自身の個人負担で高額な心理カウンセリング料金が必要となるため、気軽に利用できる医療環境にないといえます。

職場ストレスで疲れたサラリーマンの通勤風景


 この現状から、日本では、職場で受けたストレスを家庭に持ち帰り家族に発散してDVや児童虐待となること、さらにその虐待をうけた子どもが学校で他の生徒へのイジメ問題を起こすなどのストレス禍の環境循環を引き起こす現状が起きています。その結果、心の問題が重篤な状況に至った段階でメンタル・クリニックなどで、診察を受けて処方される多剤投与の長期服用に至ることで、新たな副作用による身体不調に曝されるケースが多いという現実があります。

副作用リスクに注意しながら投薬処方をする医師


 この状況は、医療保険の対象外のために、専門性の高い心理カウンセリングを気軽に受けられないことで、メンタルヘルスのプライマリケアにとって重要な心理カウンセリングが気軽に受けられない状況にあるといえます。そのため、悩みを初期に解決することができず、ストレスが長期化して精神疾患を発症するケースが多くなります。その結果、医療保険で低コストで診察してもらえる心療内科などで睡眠障害などの診断を受けて、投薬中心で長期間通院することになります。それにより、副作用リスクのある多剤服用と長期服用が続き、顕在的および潜在的な薬剤の副作用リスクを抱える現状に直面します。

問題解決をはかれる第一処方の心理カウンセリングの場面


 それは、疲れた心のストレスケアを図り、根本的な自己理解の促進や、対人スキルを向上させ「世渡りじょうず」となる等、問題解決を図る心理カウンセリングに容易にアクセスできないという事自体が大きな社会問題です。苦しさを一時的に紛らわすお薬による対症療法で、抱えた精神疾患から抜け出せない状況が続き、社会から置き去りにされたような不安感で、心が晴れた生活に戻ることができない苦しさが続いているといえます。その結果、社会的な引きこもりや、苦しさの中で社会にたいする反社会的な憎悪による異常事件、家庭でのDV事件や悲惨な児童虐待、都市をさまよう薬物のオーバードーズで生き抜く未成年など、社会問題を誘発する心理的な引き金となっているのではないかと、思わずにはいられません。

満開の桜とスカイツリーの光景


 米国では独立開業する心理カウンセラーによるオンラオインのビデオ・心理カウンセリングも医療保険の適用対象です。日本においても、一部の恵まれた民間大企業や官公庁・自治体で働く正規従業者の方々だけでなく、一般市民の方々が気軽に欧米諸国のように、低コストで悩みの初期解決が可能で、向精神薬による副作用リスクのない、安心安全な心理カウンセリングが容易に受けられる社会制度を目指すことが、日本におけるメンタルヘルスケアの重要課題だといえます。

著者紹介
長谷川メンタルヘルスケアセンター【ボランティア活動団体】
代表 長谷川裕通 プロフィール