「からかい言葉」は身近な人を傷つける心理的虐待です
あなたの意地悪な「からかい言葉」が、職場で、家族で、学校で、人を傷つけています
学校で友達をからかう「悪ふざけ」や、職場で人を「おちょくる行為」、そして子供の「欠点ばかりを指摘」する美点凝視ができない親御さんの言葉、それらは「心理的虐待」に該当するという社会的な共通認識が必要です。それは、相手の気持ちや苦しさを思いやる心を持つことによって、全ての多様性のある人たちと、共に幸せに暮らせる共生社会を実現させることができます。
目次
友達や家族をおちょくる「悪ふざけ」は心理的虐待になるという社会認識が必要です
長谷川メンタルヘルスケアセンターへのご相談のなかで、「からかい言葉」で傷つき、心身に不調をきたしたという方々へのメンタルケアの心理カウンセリングが増えているように感じています。その背景として問題のある誤認識が存在してることに起因しているように思われます。それは多くの職場での「からかい言葉」程度なら、パワハラやセクハラに該当しないという誤認識です。また同様に、家族に暴力をふるわなければ、DV行為や児童虐待ではないという誤認識を持つ親御さんが、まだまだ多くいます。なかでも「家族に虐待などしたことがない」と自認している親御さんが、日常的な「イヤミ言葉」による心理的虐待で、心身の不調を訴える子が増えることを心理カウンセラーとして危惧しています。日常的な心ない「からかい言葉」は、職場ストレスとなる非常識なパワハラやセクハラに確実に該当することであり、家庭における日常的な「からかい言葉」はDV行為や児童虐待に結び付く心理的虐待となります。さらには学校イジメやSNSでの誹謗中傷も同様です。この「からかい言葉」は心理的虐待であるという、適切な社会認識を醸成し、全ての世代で認識されるように広めることが必要だと考えています。
あなたの何げない「からかい言葉」、「イヤミ言葉」、「けなし言葉」などの非常識な言葉が、相手の心を深く傷つけています。それは、相手が傷つくことを認識できない人や、相手の立場に立って考えることができない人、相手の気持ちを推察できない人です。そのような人が職場に存在すると、周囲にストレスをまき散らす厄介な「職場の困った人」で、多くは対人ミュニケーション能力に問題があります。
職場においては、自分のパワハラやセクハラ言動を認識できない職場の上司や同僚に「困った人」がいると、その職場はストレスが大きく、心理的安全性の得られない典型的な悪環境となり最良のパフォーマンスを発揮できなくます。
家庭においては、家族にたいして、目に付いた欠点を誇張して「イヤミ言葉」で指摘する父親がいる家庭などでは、家族が安らぐことがなく心理的虐待の典型となり精神的なDV行為や児童虐待に至ります。
学校においては、学校で友達をからかう意地悪で稚拙な生徒がいると、人が気にしている事や人に触れられたくない事を探し出しては、面白おかしく「からかい言葉」を本人に伝えたり、誹謗中傷をSNSで拡散したりする心理的虐待の言葉です。その加害者となる児童や生徒たちは、相手の気持ちを考えることができない稚拙さや性格の未成熟さによるところが大きいといえます。それは典型的な学校イジメやSNSイジメに発展する「からかい言葉」です。
このような非常識な「からかい言葉」で周囲の人にストレスを与える人の多くは、パーソナリティ障害(人格障害)の傾向が強いという共通した特徴があります。
長谷川メンタルヘルスケアセンター参考情報
・長谷川メンタルヘルスケアセンターの紹介 / 長谷川メンタルヘルスケアセンター (hasegawamental.org)
・心理カウンセリング領域と対処ヒント / 長谷川メンタルヘルスケアセンター (hasegawamental.org)
・心理カウンセリング形式と申込方法(利用規約) / 長谷川メンタルヘルスケアセンター (hasegawamental.org)
相手を傷つける「からかい言葉」で優位な立場を確保する深層心理が働く
常に「からかい言葉」で相手を平気で傷つける人の深層心理の一つに、相手の気持ちをネガティブにさせることで、自分の立場を優位にしたいという心理的な動因が機能していると考えられます。そのために、相手の気持ちが落ち込むような欠点・問題点を探し出し、それをフォーカスする言葉で、誇張するイヤミや意地悪な言葉で指摘します。そのような人を傷つける非常識といえる心理的虐待の行為が平気でできるのは、人格の異常性によると考えられます。それは相手を思いやる心の無さに問題があるともいえます。
一般的に、標準的な人格を持つ人の深層心理には、相手の立場に立って相手の気持ちを推し量ること、人を敬う温かな配慮ある気配り、そして倫理観を保とうとする心理が働きます。それが一般的な人が持っている「人への思いやり」を維持するために、非常識な言動にたいする倫理的ブレーキが機能しています。しかし、非常識な「からかい言葉」を常に投げかける人には、その倫理的ブレーキが機能しないという人格異常の傾向が強いといえます。
また、平気で人の心を傷つける心理的な背景には、本人の大きな劣等感や指摘されたくない心の問題を抱えているケースもあります。それは、常に優位な立場を確保することで、自分への欠点指摘を防ぐ狙いがあり、常に先手をとって、攻撃的な言葉や相手を傷つける「イヤミ言葉」を常に考えています。また、相手の持つ劣るポイントを常に意識して探し出し、それを誇大指摘する言葉を投げかけることに、力を注ぐことに結び付いていることが考えられます。
このような人達に、人格の異常性が作り上げられた背景として、幼少期に虐待を受けたり、事件や大きな出来事に巻き込まれたりしたことで、人格の偏りが形成されたということも考えられます。そのことから、そのような人達はメンタルケアのサポートが必要な方々でもあり、社会的に相手を気遣う対人コミュニケーションの社会スキルを獲得支援するサポート対象だという事を常に念頭に置くことが必要です。
パーソナリティ障害の人格異常が心理的虐待となる
人をからかうことは、面白半分の軽い気持ちであっても、その言葉は相手をどれほど傷つけるのかを、相手の立場に立って考えることができない人の無神経さの心理的背景として、人格の偏りや人格の問題による異常心理による特異的な行動傾向だといえます。
米国精神医学会(APAが発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)によれば『パーソナリティ障害(人格障害とも呼ばれます)とは、本人に重大な苦痛をもたらすか、日常生活に支障をきたしている思考、知覚、反応、対人関係のパターンが長期的かつ全般的にみられる人に対して用いられる用語です』とあり、職場の周りの人たちが困った状況にある場合でも、本人が気づいていない場合も包含しています。
具体的には、『パーソナリティ障害は、個人のパーソナリティ特性が顕著で、融通がきかず、不適応であるために、仕事や学業、人づきあいに問題が生じている場合に認められる障害です。これらの社会的不適応は、パーソナリティ障害を抱える本人や周囲の人に大きな苦痛をもたらすことがあります。ほとんどの人は自分のパーソナリティ特性が適切でなく、悪い結果を招いてしまう場合に、自身の反応パターンを変えようとします。対照的に、パーソナリティ障害の人は、自分がとる反応のパターンが繰り返しうまくいかない場合や不都合な結果を招いている場合でも、そのパターンを変えようとしません。そのようなパターンは、状況に応じて調節(適応)されることがないため、不適応と呼ばれます。不適応な行動パターンの重症度と持続期間は様々です。』
「からかい言葉」の言動が多いパーソナリティ障害の特筆すべき類型(DMS-5より)
米国精神医学会(APA)が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)において、特に、職場、家庭、学校での心理的虐待となる「からかい言葉」で相手を傷つける人格に異常性を有する「パーソナリティ障害」の類型を下記に紹介します。
・自己愛性パーソナリティ障害:
もろい自尊心、賞賛される必要性、および自分の価値についての過大評価(誇大性と呼ばれる)と他者への低い評価、共感性のなさを特徴とします。自己愛性パーソナリティ障害の患者は自分の能力を過大評価し、自分の業績を誇張し、他者の能力を過小評価する傾向があります。自己愛性パーソナリティ障害の診断は、自分の重要性と才能についての誇大な、根拠のない感覚、無条件に賞賛されたいという欲求、特権意識などの特定の症状に基づいて下されます。自己愛性パーソナリティ障害の有病率の推定値にはばらつきがありますが、おそらくは最大で一般集団の6%にのぼるようです。男性により多くみられます。
・境界性パーソナリティ障害:
一人でいることに関する問題(見捨てられる恐れによる)、感情や衝動的行動をコントロールすることの問題がある。境界性パーソナリティ障害は、人間関係、自己像、気分、行動の不安定性、そして拒絶されたり、見捨てられたりする可能性に対する過敏性を特徴とします。境界性パーソナリティ障害の患者は一人でいることに耐えられず、一人でいることに対処したり、一人になることを避けたりするために自己破壊的行為に訴えることがあります。見捨てられることを避けるために、危機を生み出すなどの死に物狂いの努力を払うことがあります。例えば、自分の苦痛を伝え、他者が救助または世話をしてくれるよう仕向ける形で自殺のそぶりをみせることがあります。
境界性パーソナリティ障害の有病率の推定値にはばらつきがあります。米国の一般人の2~6%近くにみられるようです。男性よりも女性の方が多く診断されます。大半の患者で、時間の経過とともに症状が緩和する傾向があります。
・強迫性パーソナリティ障害:
完全主義、柔軟性のなさ、頑固さを持ち、結果的に仕事の完了を妨げるような規律性、完全主義、コントロール(柔軟性や効率性の余地がない)への広汎なとらわれを特徴とします。強迫性パーソナリティ障害の患者は、物事をコントロールしている状態におき、自分なりの完全主義を追求する特定の方法で物事を進める必要を感じます。強迫性パーソナリティ障害の診断は、細部、規則、スケジュール、秩序、およびリストに対するとらわれ、また仕事の完成を妨げてでもある物事を完全に行うことの重視などの、特定の症状に基づいて下されます。強迫性パーソナリティ障害は最も多いパーソナリティ障害の1つです。有病率の推定値にはばらつきがありますが、おそらくは米国の一般集団の2~8%程度であるようです。この病気は男性により多くみられます。
・反社会性パーソナリティ障害:
社会的無責任、他人の軽視、欺瞞、自分の利益を得るための他人の操作をすることが多く、自分や他者がどうなるかを考えることなく、また良心の呵責や罪悪感をもつことなく、自分の望むことを追い求めます。反社会性パーソナリティ障害の診断は、結果や他者の権利の軽視、自分が望むことを手に入れるためにうそをついたり、操作したりすることなどの症状に基づいて診断が下されます。
反社会性パーソナリティ障害の有病率の推定値は、米国の一般集団で0.2%(500人に1人)~3%超のばらつきがみられます。この病気は男性に6倍多くみられます。この病気は高齢者層では少なく、患者が時間の経過とともに自分の行動を変化させることを学べることを示唆しています。
参考情報:アメリカ心理学会ホームページ American Psychological Association (APA)
パーソナリティ障害傾向にある職場上司による心理的虐待の「からかい言葉」
職場で、常習的にイヤミ言葉で相手の欠点を指摘することを、確信犯的な言動を繰り返しながら、自分の倫理観の無さを自覚していないパーソナリティ障害傾向にある職場の上司は困った人の典型といえます。
その心理的な背景には、自分の立場を優位に保つために、相手の欠点を誇大指摘することで、相手が自分の言いなりになるような優位性を確立することを狙って、常にイヤミ言葉を連発しているケースもあります。典型的な例としては、職場で、定時に退社する部下や同僚にたいして歪曲的表現で「婚活パティー頑張れよ」と、周囲に聞こえるようにイヤミを連発したり、新調したスーツを「〇〇タクシーの運転手と同じ制服だな」と平気で「けなし言葉」で伝えたり、新しく購入したスマホを「猫に小判だな」とけなすしたり、仕事上の問題点を人前で周囲に聞こえるように無神経に指摘したりする人がいます。このような職場における困った人にはパーソナリティ障害の傾向があるといえます。
パーソナリティ障害の傾向にある親御さんによる心理的虐待の「からかい言葉」
常に優位な立場を獲得するために、妻の持ち物や服装の様子、子どもの学業や友だちの事など、相手が傷つくことを平気で言ったり、欠点や弱点をいつも指摘する父親がいます。家族本人にとっては、指摘されたくない自分が気にしている事、言われたくない欠点や問題を指摘し続けるイヤミな父親は、相手の気持ちを察することが出来ないという、共通した心理的側面はパーソナリティ障害の特性といえます。
子どもへの躾だとして、親の言いつけを守らせるために必要な指摘をしているのだという親御さんがいます。それは、子供の問題点、欠点、才能の無い箇所、不得意な科目やテスト成績、など、に常にフォーカスを当ててイヤミ言葉を連発する親御さんが該当します。しかし、常にそのイヤミ言葉を連発されると子どもは自己効力感がない状態となり、自己否定の状態に陥ります。自分はダメな子、自分は何をやっても親から否定される子、などというネガティブな自己認識が形成されることになります。
さらに、親が指摘する視点は、親が持つ古い価値観に基ずく考えが元になっています。その考えは、不確実性のある現代社会での新たな課題を克服できる、未来を開拓する新たな発想やアイデアは生まれない考えといえます。古い時代の親の考えではなく、子供の持つ奇想天外なアイデアと発想を引き出すことは難しくなります。常に自己否定の言葉を投げかけられることで、対人コミュニケーション能力に問題を生じたり、社会に出てから大きな困難を乗り越えるための解決能力とバイタリティーが育たない恐れがあります。
我が子へのネガティブな「からかい言葉」や「イヤミ言葉」は、子どもの自尊心を傷つけ、社会的な引きこもり状態へと我が子を追いやる結果となる恐れがあります。
相手を思いやれない児童生徒による「からかい言葉」が「学校いじめ」となる
友達が言われたくない事、隠しておきたい家族のこと等、気にしている事を、探し出しては、面白おかしく「からかい言葉」で、本人に伝えたり、周りに言いふらす稚拙な児童生徒がいます。このような心理的虐待は学校イジメの典型的な行為です。
この学校イジメにおける「からかい言葉」の心理背景にも、相手の気持ちを察することができない、相手の立場に立って考えることができないという未成熟な性格特性が影響していることがあります。標準的な子どもの心理発達では、相手の気持ちを察することができるのは、幼稚園児の小学入学前の年齢程度からは相手の気持ちを察することができ、相手の寂しさや悲しさを共感できる心象が可能となります。しかし、小学生になっても、相手の気持ちを察する子が出来ない児童生徒もいます。むしろ相手が嫌だと思う事に面白おかしく、「からかい言葉」を本人に直接伝えたり、周囲に言いふらしたり、陰口を言ったりする子もいます。
しかし、その子の心理背景には、人を暴力行為をしていないこと、人が嫌がることであっても真実であり嘘をついていないこと、親しい友達にかまってほしい等、自分の行為はイジメではない問題ないと考えて、稚拙ではあるけれと正当性認識が存在していることも考えられます。
この深層心理のひとつの側面として、その児童生徒が家庭で児童虐待をうけているケースがあります。家庭でうけた虐待のストレスを学校で発散するかのように、友達をからかうことで、無意識のうちに自分の心のバランスを保つ行為となっているケースもあります。そのため、その子自身もメンタルケアのサポート対象である可能性を念頭に入れておく必要があります。
未来社会に向けて心理的虐待を防ぐために、「人の多様性」を尊重し、「人を思いやる心」が必要です
相手の気持ちを不快にし、心を深く傷つける「からかい言葉」や「イヤミ言葉」、さらには相手の自尊心を奪いとる「けなし言葉」は、すべてが心理的虐待です。相手の人間としての尊厳を無視し、相手の快活な向上心を無くし、相手の気持ちを落ち込ませることで、自分の立場を優位にすることは非常識な恥ずべきです。
相手の気持ちを無視した一方的な偏見によるSNS投稿での誹謗中傷、友達をからかう悪ふざの「からかい言葉」による学校イジメ、部下や同僚の心を傷つける職場のパワハラ、家族の自信をなくす日常的なイヤミ言葉による静かなる虐待、それらの言葉は、いつまでも消えることなく心の中で叫び続けます。投げかけたあなたが忘れていても、あなたの声は相手の心の中で叫び続けています。相手はあなたの意地悪な言葉による心理的虐待をけっして忘れることはありません。
子ども達の何げない悪ふざけの「からかい言葉」であっても、相手の心を傷つけます。相手の心を不調にする言葉による心理的虐待はすべての場面でなくすことが必要です。職場でも、家庭でも、学校でも、SNSの世界でも、心理的虐待を防ぐために必要なことは、相手の持つ人間の尊厳を大切にすることです。あなたがもしもいじめる側の立場なら、すぐにその言動を改めることが必要です。あなたの価値観で相手を見下さないでください。あなたの古風で見識の狭い価値観は時代遅れです。職場でも家庭でも、これからの若い世代が切り開く未来には通用しない価値観となっていることを認識してください。新世代の若者や子どもたちが切り開く未来には、新たな企画思考力や突拍子もない斬新なアイデアが必要となっています。
いま必要なのは、人間としての個が持つ多様性を認めてあげることです。若者であっても幼児・児童であっても、未来に生きる新たな世代の人間として尊敬し、相手を思いやる気持ちが必要です。それによって、新世代の人たちが自分の力を信し、自信ををもって、新たな未来にを切り拓くことが可能となります。
世界中の人々が、個人と集団にたいする「多様性の尊重」と相手を「思いやりる心」を持つことで、心理的虐待のない安らぎに満ちた平和な社会が到来することを心から祈っています。
長谷川メンタルヘルスケアセンター
代表 長谷川 裕通