能登半島地震 被災者メンタルケア緊急支援のご案内
被災された方々への緊急支援として、スマホのLINEやZoomなどによるオンラインでの無料メンタルケアを実施します
今回の能登半島地震で被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
本来のお正月であれば、ご家族と楽しい時間を過ごすはずだった、この1月1日に発生した悲惨な地震で被災された方々の言葉が出ないほどの、苦しい状況を心からお察しいたします。一日も早く救援物資がお手元に届けられ、多くの援助の手が差し伸べられ、この危機を乗り越えられるよう、心からお祈り申し上げます。
長谷川 裕通
被災者メンタルケアの無料サポートを実施します
長谷川メンタルヘルスケアセンターでは、被災された方々へのメンタルケアで少しでもお役に立てるように、避難生活の現場から、ご自身のスマホやパソコンを利用して、LINEやZoomなどの、オンラインリモート(ビデオ相談)によるメンタルケアを無料対応いたします。
当ホームページの、オンライン相談の予約ページから、空き時間を確認し、予約してください。または、お問合せページからご依頼くださるよう、お願いします。
避難生活時のメンタルケアと注意点
避難生活の初期ステージには、食事を確保すること、眠ること、身体的な安全確保が第一優先です。そして、しばらくして、やや落ち着きを取り戻された避難生活の第二ステージとして、被災された方々へのメンタルケアが重要となる時期がやって来ます。
この避難生活の第二ステージは、やや落ち着いた頃に、当時の状況が頭に浮かび、とても苦しくなることがあります。それは、震災当時の詳細状況の記憶に身体が反応するPTSD的なフラッシュバックが起きることがあります。それを防ぐために、避難生活では、食事などの不自由な避難生活の身体的ストレスに加え、心の心理的ストレスへの適切な対処が必要です。これは、被災されたご本人にとっても、サポートする側の立場の周囲の方々にとっても、共に認識しておくことが必要です。それを理解されることで、被災でうけてしまった心の傷を一日でも早く癒し、深いトラウマとなることを防ぐことができます。
避難生活におけるメンタルケア方法について、その対処方法と留意点を、参考にして頂ければ幸いです。
関連参考情報(長谷川メンタルヘルスケアセンター):トラウマ体験の心理的影響とケア方法
関連参考情報(長谷川メンタルヘルスケアセンター):メンタルヘルスケアの領域と対処方法
第一ステップ:震えるほど怖かった「身体感覚」へのケア
恐ろしい体験をした時のメンタルケアのポイントは、被災した体験記憶の3つの領域をターゲットとして、ケアすることです。それは「身体の記憶」、「感情の記憶」、そして「知識の記憶」です。そのうち、大至急に取組むべき領域が、「身体の記憶」です。生存するための配給された食料や飲料水をなんとか得ることができ、被災した避難場所で、やや落ち着きを取り戻されたときに、身体的・感覚的な恐怖を第一優先でケアしてあげることが必要です。
そのために必要なのが、スキンシップです。お子さんに対しては、やさしく身体を「抱っこ」してあげることや身体を擦ってあげてください。高齢者の方々には、優しく手を握ってあげてください。そして、成人の方々には、一人にしないで、そばに寄り添うことです。この場合に年齢を問わず、重要な注意点は被災時を回想させて記憶をよみがえらせることがないように、言葉がけに注意することが必要です。例えば、その被災した瞬間の様子を質問したり、相手に語らせるように、けっして話しかけないことです。話しかける言葉は、相手の年齢にあわせて、もう大丈夫だということ、なんとか切り抜けることができてよかったこと、現在の事だけを言葉にして伝えます。過去・現在・未来のうち、現在の状況だけを話題にし、楽しかった昔の話題をしないことです。それは、平穏だった過去と現在の惨状を比較してしまうことでストレスが大きくなります。また、被災時の様子を話すことで、その時の恐怖がよみがえります。さらに、今後の事も話題にしないことです。それは将来の困難に立ち向かうパワーや努力が必要となる、今後の見通しの事は、現時点では大きなストレスとなりますので、話さない事が望ましいといえます。この先の事は、時間をかけて、ケアの第二ステップの感情処理、及び第三ステップの認知処理のステージで、自分自身と家族の将来に向けた、時間をかけてゆっくりと考えを整理することが必要な次のステップです。とくに、時間を要する「認識・考え」のメンタルケアの領域は、被災直後の避難生活での現場における初期のメンタルケアの対象ではありません。
第二ステップ:恐怖・悲しみの「感情」へのケア
被災時の恐怖感情や、被災後の避難生活での不安感情を、軽減するための感情の体験記憶を処理するためのメンタルケアです。被災直後には、どうしても、恐怖の恐ろしい、怖い、という感情が溢れ出てしまいます。それは、余震が起きるたびに繰り返し、身体がいつも揺れている感覚が、しばらくは余震に伴い続くことで、恐怖の感情が繰り返し襲ってきます。その時に、自分自身の肩や腕を自分の掌で、自分自身の身体をしっかりと抱きかかえるように、余震で揺れる身体感覚で、恐怖感情が沸き起こりますが、自分自身にたいして、安心できる言葉がけをしてください。「今は、避難場所という安心できる安全な場所にいる。だから恐れることはない。大丈夫だ。」そして、「恐怖も徐々に収まるから、大丈夫だ」と繰り返し自分に伝えてください。この言葉は、恐怖状況にある我が子にたいしても同じようにしてあげてください。また周囲のサポートする側の立場にある方々も、同様に、恐怖や悲しさに震える子ども達や周りの人たちにも安心できるように、同様の言葉を優しく伝えてください。
そして、感情はけっして無視することなく、自分が感じている感情を素直に、肯定的に感じてください。それは必要な自分を守るための身体に必要な反応だと考えてください。それは、悲しさや不安などのつらい感情にたいしても同じです。悲しさを感じると涙が溢れます。その涙や身体の震えは、あなたを開放する行為としての感情表現であり、それを肯定的に感じてください。否定することなく、無視することなく、繰り返しその感情を肯定的に感じることで、その感情は徐々に軽減されます。そして、不安で恐怖で悲しい現在の困難から立ち上がるための、あなたを導く、新たな考えなどの「認知」が自分の頭に自然に浮かぶことに結びつく、助けになるきっかけといえる、感情の放出です。けっして、その感情を無視したり、無理に抑えることなく、心のままに開放してあげて下さい。それを周囲の人は、優しく手や肩を包み込むなど、そっと温かなスキンシップで寄り添い、見守ってあげて下さい。「大丈夫だよ」と一言添えるだけで、何かを質問したり、具体的な話題で話しかける必要はありません。
第三ステップ:被災してしまった「認知」へのケア
この「認知」へのケアは、被災した事実への受け止め方の知識上の体験記憶へのケアであり、被災した避難場所で実施する中心的なケアではありません。時間をかけて実施するケアであり、避難場所では、なるべく、深く考えない事が望ましいといえます。避難場所でも、やや落ち着きを取り戻した時、あるいは、ある程度の期間の避難生活を余儀なくされる場合には、「なぜ、被災したんだろう」とか、「もし、あの場所に居なければ」とか「原因は自分にある」などの自分を責める傾向が強くなります。これは、3つの体験記憶である、「身体感覚」、「感情」、「認知」のうち、被災したこと自体を考えてしまう「認知」の体験記憶が避難生活以降に出来上がってしまいます。この考えをめぐらすことによって出来上がる「認知」という知識領域のケアには、時間を十分にかけてゆっくりとケアしてあげることが必要です。それを避けるために、「なぜ、・・・」、「どうして、・・・」などの考えが頭に浮かんできたら、被災直後はなるべく、その考えは追い払うようにしてください。
その理由として、どうして被害に遭遇してしまったのかと思いを巡らすことで、その理不尽さに家族が遭遇した事は、自分に責任があるから被災したという自分を追い詰める「知識的」な体験記憶が形成されてしまう恐れがあります。その体験記憶として形成された認識にたいしては、時間をかけてケアしてあげる必要があります。それはトラウマケアとしての、メンタルケアの終盤のターゲットです。そして、「被災した原因は、自分に天罰を与えられるような罪があったから、罰せられた」と考えてしまう傾向が強まります。しかしそのような自分を責める考えに至らないように注意が必要です。それには、「自分に責任があるのではなく、避けることができない理不尽な自然災害だから仕方がなかった」という解釈の認知の方向に、時間をかけたたケアが必要となります。
しかしながら、被災した直後に、避難場所などで、ご自身を責めるような考えが浮かびがちとなりますので、そのような「なぜ、・・・・」が頭に浮かんできた時には、「とにかく、理不尽な、人間には防ぐことができない天変地異が原因なんだ」だという言葉を頭に、繰り返し伝えてください。
被災した子供への大切なケア・ポイントは、「スキンシップ」と「褒めること」です
とくに、避難現場で心理的な影響が大きいのは、幼児や児童などの子ども達です。子どもへのケアの場合には、震災時の恐怖心・不安感によって、心理的ストレスが大きくなると身体の動きが少なくなり、ふさぎ込んだ様子で、言葉を出せない状態となります。そのような時には、身体を包み込むように両手で抱きしめてあげること、頭や背中をやさしく撫でてあげること、身体を抱きしめてあげること、添い寝をしてあげること、などのスキンシップが常に必要です。それによって、身体感覚で記憶してしまっているドキドキ感や震えを伴う身体的な恐怖心を軽減してあげることができます。そのスキンシップによって、お母さんのお腹で胎児の時のような、守られているという安心感が出てきます。そのスキンシップと同時に優しく、安心する言葉がけが重要です。やさしく子どもを抱きかかえながら「もう大丈夫だよ、もう安心していいよ、大丈夫だからね」と優しく赤ちゃんに対して話しかけるように、たとえ小学生の高学年であっても、声をかけてあげて下さい。そして、身体を動かすことができるようになり、自らが徐々に子どもらしさの活発さが戻ることで、ストレスケアの効果がでてきます。
子どもの場合には、ストレス耐性が小さく、心の大きなトラウマとなる恐れもあります。しかし反面、子どもには脳神経的な発達期にあるためと思われますが、ストレスをうまく処理することができれば、早く回復できます。その回復力は、適切なストレスケアによって、困難な状況を乗り越える成長力といえる大きな生命力のパワーを引き出すことが可能です。そのことから、単純に「がんばれ」などという言葉は避けてください。それは、頑張ることを強要することになります。励ます言葉はは子どもを追い込むことになるため、避けることが必要です。むしろ、子ども本人が自分のパワーを自覚できるるように、避難場所では、どんな些細なことでも褒めてあげてください。例えば、お手伝いしてくれたこと等にたいして、お礼の言葉と共に、いっぱい褒めてあげてください。いっぱい褒めてあげることによって、どんな困難な状況でも乗り越えられる自己効力感が大きく育ちます。この直面している、困難を一緒に乗り越えられるように、大切なお子さんの成長をサポートしてあげるようにお願いします。
今回の能登半島地震で震災に被災された多くの方々が、一日も早く困難な状況から抜け出すことができて、平穏な生活が戻ることを、心からお祈り申し上げます。