4月1日から東京都「カスタマーハラスメント防止条例」がスタート!

経営者は、顧客や取引先のカスハラ被害から従業者を守る体制構築が求められます
東京都の「カスタマーハラスメント防止条例」が4月1日にスタートしました。これにより、すべての企業・組織の経営管理者に対してカスハラ対策が義務化されます。顧客からの不当要求などによるカスタマーハラスメントを防止し、従業者を心身ストレスから守り、健康で働きやすい職場づくりが求められます。
目次
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1)政府は「カスタマーハラスメント防止対策」をすべての企業義務としました
・東京都カスタマーハラスメント防止条例の基本方針
・カスハラに該当する行為
・警察への110番通報
・映像録画や音声録音での記録
・関連法令による犯罪としてのカスハラ行為
5)事業経営者に求められるカスハラ対策
・カスハラ対策の基本方針・考え方の内外周知
・顧客クレームへの初期対応ルール周知
・カスハラ被害相談・ケア体制の整備
・従業者への教育・研修の定期実施
・カスハラ常習者の来訪検知(顔認識の監視カメラシステム)
6)カスハラ対策の構築支援

①参考情報(東京都庁):東京都カスハラ対策条例(TOKYOはたらくネット)
②報道情報(NHK首都圏ナビ):東京都カスハラ条例4月から始まる!

政府は「カスタマーハラスメント防止対策」をすべての企業義務としました
国は、2025年3月11日の閣議決定で、労働施策総合推進法を改正し、顧客らから不当な要求を突きつけられる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止策を企業に義務づけました。それにより、すべての企業は、従業者向けの相談窓口の設置など、必要な体制整備を義務づけるとしました。

①参考情報(厚生労働省):企業ツール(マニュアル・ポスター・研修動画、マニュアル策定手順例)
③参考情報(厚生労働省):カスハラ対策企業マニュアル(60ページ PDF)
②参考情報(厚生労働省):業種別カスハラ対策企業マニュアル(スーパーマーケット編)

4月1日からカスハラ防止条例を施行する全国の自治体(東京都、北海道、三重県桑名市、群馬県嬬恋村など)
東京都では、全国に先駆けて、2024年10月に「カスタマーハラスメント防止条例」を成立させ、2025年4月1日に施行しました。

同様に4月1日から「カスタマーハラスメント防止条例」を施行する自治体は、東京都のほか、北海道、三重県桑名市、群馬県嬬恋村などがあり、現在も大阪府、愛知県などが条例化を検討中です。

今後は企業組織の経営者は、従業者が安心して働ける職場環境づくりとして、従来の社内におけるパワハラ、マタハラなどのハラスメント対策に加え、顧客や取引先からのカスハラ対策も求められます。

カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは、「顧客や取引先などが就業者に対し、暴言や過度な要求など、社会通念上許容される範囲を超えた迷惑行為を行うこと」を指します。

厚生労働省のカスタマーハラスメント対応企業マニュアルでは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とされています。

2024 年 12 月 26 日、厚生労働省の審議会内でカスハラの要件が下記3項目含まれるものされています。
①顧客や取引先、施設利用者、そのほかの利害関係者が行うこと。
②社会通念上相当な範囲を超えた言動であること。
③労働者の就業環境が害されること。
東京都カスタマーハラスメント防止条例の内容
2025年4月1日に施行された東京都の「カスタマーハラスメント防止条例」は全国の地自体に先駆けて、2024年10月4日制定されています。従来、直接的にカスタマーハラスメント自体を規制する法律はなく、刑法などの関連法令によって抑止されてきましたが、ピンポイントで不当な顧客要求を規制するための法律は画期的だと評価されています。

今後は事業経営者による従業者への安全配慮義務とあわせて、従業者をハラスメントから守り、心理的安全性の高い職場づくりが期待されます。

東京都カスタマーハラスメント防止条例の基本方針
・カスハラ行為に対して、働く人を守る、毅然と対応する、などの基本方針を会員企業に示しましょう。
・行為の抑止や、安心して仕事ができる環境につながります。

カスハラに該当する行為
- 暴力行為
- 暴言、侮辱、誹謗中傷
- 威嚇、脅迫
- 人格否定、差別的発言
- 土下座の要求
- 長時間の拘束
- 社会通念上相当な範囲を超える対応の強要
- 合理性を欠く不当、過剰な要求
- SNSなどへの投稿(信用棄損、個人情報など)
- 従業員へのセクハラ、SOGIハラ、つきまとい行為など

警察への110番通報
暴行・脅迫など緊急性や危険性がある場合、躊躇せずに警察に通報することが必要です。もしも、災害、停電、携帯電話回線のトラブルなどの影響により、通信障害が発生し、110番通報できなくなった場合は、慌てることなく、周囲に助けを求めて、他のキャリアの携帯電話、固定電話、公衆電話を利用して通報することが必要です。

また、あらかじめ、自宅や勤務先等の周辺の警察署や交番の所在地を確認しておき、有事の際は、直接訴え出ることや、 パトロール中の警察官やパトカーに直接訴え出るようにします。
映像録画や音声録音での記録
カスハラ被害をうけたその現場の映像や音声を記録することで証拠を保持し、その事実を立証可能とすることができます。
対応時に、持ち合わせているスマホの映像記録や録音機能を活用すること、カスハラ現場を撮影できる監視カメラで撮影される場所での対応などを普段から考慮しておくことが必要です。

関連法令による犯罪としてのカスハラ行為
顧客等のカスハラ行為の内容によっては、以下ような犯罪が成立する可能性があります。
1.刑法
第130条(不退去)第176条(不同意わいせつ)第204条(傷害)第208条(暴行)第220条(監禁)第222条(脅迫)第223条(強要)第230条(名誉毀損)第231条(侮辱)第233条(信用毀損及び業務妨害)第234条(威力業務妨害)第249条(恐喝)

2.ストーカー規制法
第3条(つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして不安を覚えさせることの禁止)
3.性的姿態撮影等処罰法
第2条(性的姿態等撮影)
4.独占禁止法
第3条(私的独占又は不当な取引制限の禁止)
5.下請法
第4条(親事業者の遵守事項)

参考資料(東京都)
①カスタマーハラスメント防止に関する指針
②カスハラ防止のための各団体共通マニュアル(97ページPDF)
③カスハラ対応のための各団体共通マニュアル(4ページ抜粋版)
事業経営者に求められるカスハラ対策
企業・組織の経営者や管理者はカスタマーハラスメントが発生しないように、未然に防ぐための職場における対策が必要です。そのためには、教育・研修などを通じて顧客対応力を高め、未然防止に結びつけます

カスハラ対策の基本方針・考え方の内外周知
カスハラの未然防止には、毅然と対応するだけでなく、顧客等との良好な関係づくりが最重要となるため、傾聴や顧客等の権利の尊重などの基本的な顧客対応の考え方について、社内に周知し啓発を図り、ホームページなどで毅然とした態度でカスハラに対応する方針や考え方を公表することが必要です。

顧客クレームへの初期対応ルール周知
顧客からのクレームや要求内容にどのように対応するか、カスハラ防止への初期対応の考え方、その手順をマニュアル化し従業者に周知します。

カスハラ被害相談・ケア体制の整備
カスハラ被害者が迅速に組織内で相談管理部門の相談窓口を明確にし、その報告内容を共有できる体制を社内に構築します。被害をうけた従業者への心理カウンセリングによるメンタルケアが可能な外部専門家との連携体制も必要です。

従業者への教育・研修の定期実施
カスハラ防止の教育・研修を従業者に実施し、全員が受講できるよう、定期的に最新情報で研修内容をアップデートすることが必要です。

カスハラ常習者の来訪検知(顔認識の監視カメラシステム)
最新のITシステムを導入することで、常習的なカスハラ顧客にたいして、すべてのスタッフが被害を受けることがないようにする対策があります。それは、過去のカスハラ常習者を顔認識システムで検知して来訪時の警報を発信できる監視カメラを導入することで、再来訪時に被害防止の警戒が可能となります。

カスハラ対策の構築支援
人材不足の時代における、これからの企業組織の経営には、これまでの社内のパワハラやセクハラ対策と同様に、従業者の職場ストレスをケアするために、顧客や取引先からの過剰クレームや不当要求から従業者を守り、働きやすい心理的安全性の高い職場を創出することは、確実な業績を確保するための必須条件といえます。

長谷川メンタルヘルスケアセンターでは、従業者の方々がカスタマーハラスメントによる職場ストレスを受けることなく働ける職場環境を構築するために必要な、事業所におけるカスハラ対策のサポートを実施しています。

その内容には、カスハラ対策の基本ルール策定、相談体制の整備、社内教育・研修の実施、被害従業者への心理カウンセリングによる相談・メンタルケアなどで、お役立ちできることを願っています。
執筆者紹介
長谷川メンタルヘルスケアセンター
国家資格公認心理師
代表 長谷川 裕通󠄁