ベンゾジアゼピン系薬の副作用

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ベンゾジアゼピン系薬:長期投与中止戦略の海外現状と心理療法

ベンゾジアゼピン系薬(BZD)やベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(Z薬)は、抗不安薬、睡眠薬として使用されるケース、筋弛緩作用として肩こり、筋緊張に使われるケースなど様々な症状に広く処方されてきました。しかし、海外において10年以上前から長期服用による生活上における種々の影響について指摘されており、短期間の服用では安全であると考えられていますが、長期服用では潜在的に生理的および精神的依存性やその他の有害事象と関連していると考えられています。特に高齢者における長期服用リスクでは、転倒による骨折リスク、自動車事故のリスク増加、認知障害や記憶力の低下、鎮静障害などと有意な関係にあることが指摘され、その長期投与は徐々に中止の動きへと向かい長期投与は推奨されていません。

 海外の長期投与を中止する動きとして、2014年当時のデンマークの研究報告で、Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2014年11月10日号の掲載報告で、デンマークのSophie Isabel Eriksen氏らは、同国における過去10年間の、BZDの処方の変化を調べた結果、長時間型は短時間型と比べて投与の減少幅が大きかったことを報告されており、ベンゾジアゼピン系薬の長期投与の処方が減少している報告があります。(参考引用:ケアネット2014/11/28 「ベンゾジアゼピン処方 長時間型は大幅減少」から)

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また日本においては、平成29年3月からはベンゾジアゼピン系受容体作動薬の添付文書の改訂が行われ、承認用量の範囲内であっても漫然とした継続投与により依存性が生じる可能性について追記記載され、さらに平成30年度診療報酬改定からは、抗不安薬と睡眠薬が計4種類以上投与された場合には診療報酬の減算が行われ、平成30年4月以降の処方において、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬を1年以上連続して同一の用法、用量で処方している場合に診療報酬の減算が行われることになっています。(参考引用:大阪府保険医協会・勤務医フォーラム 医療法人聖心会 清水クリニック(精神科)理事長・院長 清水聖保 氏「ベンゾジアゼピン系作動薬の長期投薬とそのリスクについて」より)

しかし、その長期服を中止することによる離脱症状が出現することによって、より生活における諸問題を抱えるリスクもあり、長期服用を中止することはより戦略的に慎重に進めることが必要です。そのような状況のなかで、海外および国内での臨床現場における研究報告は、依然と長期服用の現状があることを示唆しています。

 長期服用の状況として、海外の臨床現場の研究報告では、フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。その結果、TRD患者の約半数は、BZDが過剰に使用されており、BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間の中止率は5%未満であることを報告されています。(参考引用:ケアネット2023/6/6 「治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究」より

また、国内の状況として、聖路加国際大学の青木 裕見氏らは、精神科外来患者および精神科医において、BZDの使用と中止の意思決定に関する認識を評価し比較するため、横断調査を実施された。そこではベンゾジアゼピン(BZD)やZ薬の長期使用は推奨されていないにもかかわらず、患者と医師の認識についての差があること、精神科医543人のうち79%が、患者は睡眠薬または抗不安薬の中止に慎重だったと報告した。これは患者の意思に反して睡眠薬や抗不安剤を長期的に服用している臨床現場の現状を報告されている。このことから、調査報告書の著者らは、「睡眠薬または抗不安薬の使用と中止の意思決定について、精神科外来患者と精神科医との間に認識の差があり、このギャップを埋めるにはさらなる研究が求められる」としています。(参考引用:ケアネット 2023/6/13 「ベンゾジアゼピンの使用と中止の意思決定に関する患者と精神科医の認識比較」より

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そして、2015年の研究報告ではあるが、ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略として、投薬治療にあわせた複合的ベストな方法は「心理療法」としての「認知行動療法」、および「行動変容介入」としての「教育」、「訓練」などが挙げられている。
カナダ・ダルハウジー大学のAndre S. Pollmann氏らはscoping reviewを行って検討した結果、多様な戦略が試みられており、その1つに漸減があったがその方法も多様であり、「現時点では複数の方法を組み合わせて処方中止に持ち込むことが妥当である」と述べている。(参考引用:ケアネット2015/8/6「ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は」より